【著者登場】額賀澪さん 「弊社は買収されました」を語る

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質問に答える額賀さん(東京都港区で)

ある⽇突然、強い匂いの洗剤を⽣産している⽶国企業が、ほのかな⾹りが特徴の⽇本の⽯鹸メーカーを買収した。額賀澪さんは、⽂化の異なるこの2社の経営を統合する作業PMI(M&A 後の統合プロセス)にスポットをあて、⼩説「弊社は買収されました!」(実業之日本社刊)を書き上げた。執筆に⾄った経緯や続編の可能性などについて額賀さんに聞いた。

-M&Aが⾝近になってきたとはいえ、まだまだ⽇常⽣活でM&Aに出合う機会は少ないと思われます。そんな中、なぜM&Aをテーマに⼩説を書こうと考えたのですか。

確かに私も当初、買収というと真山仁さんの「ハゲタカ」のイメージで遠い存在でしたが、⾃分の本を出そうとしていた出版社が買収された経験が、⼀つのきっかけとなりました。発売の2カ⽉くらい前にネットニュースで突然買収が伝えられ、みんなびっくりしたことを覚えています。その半年ほど前に、別の出版社が買収されたこともあり、買収を⾝近に感じていました。

その後、買収の後にごたごたしている様⼦も聞こえてきました。私の担当者からは「全然仕事にならなくて」だとか、「社内で毎⽇誰かが密談しているんですよ」といったことを聞いていました。これから先、出版社と仕事をしている時に、また同じようなことがあるのかな、と思っている時に、実業之⽇本社から、お仕事物の⼩説をやろうという話が持ち上がりました。打ち合わせの中で買収が⾯⽩いのではないかとなり、私も他⼈事ではないなと思い、今回の企画が始まりました。

-2件の出版社の買収を間近で見聞きしたとのことですが、それほどM&Aに詳しかったわけでないということですよね。どのようにして取材をされたのですか。

M&Aについて1から全部書いてあるビジネス書を何冊か読みました。今回は買収されてから1 年後までの話を書いているのですが、PMIの本を読み、なるほど買収した企業はこういうことをやっているのだな、などと勉強しながら、頭の隅で、以前買収された出版社はこういうことだったんだな、ここがうまくいっていなかっただな、なんて考えていました。

買収された出版社の担当者とは、仲が良いので当時の思い出話として、あの時は話せなかったけれど、こういうことがあったんだよ、といった会話を交わしていました。当時の私はただただ「買収って大変なんだな」と思うばかりでしたが、勉強した後は、なるほど買収した社⻑さんは、これをやろうとしていたのだな、ということが分かるようになりました。

経済小説ではない、お仕事小説に

-M&Aを取り扱った⼩説はいくつかありますが、PMIをテーマにしたものは少ないようです。なぜPMIに絞ったのですか。

買収された企業の社員は、なす術もなく、変化に巻き込まれていきます。今回は買収された企業での、職場の人間模様にフォーカスしたいと思いました。

普段から若⼿とベテランの間に意思の疎通ができていない状況というのはどこの会社にもあるでしょう。明らかにうまくいっていないけども、何となく誤魔化し誤魔化しやっているという状況が普通にあって、そんな状態で買収などされたら、そこが顕著になって、⼤変なことになるだろうなと思い、作品の中にそうした内容を盛り込みました。

⾃分の会社が買収されるという天変地異のようなことが起こった時に、⼤混乱するけども、誰かがめちゃくちゃ悪いとか、誰かが完璧に正しいということではなく、いろんな⼈がいろんな事情を持って買収された会社でパニックに陥るという⼈間模様を描けたら、経済小説ではなく、職場の人間ドラマを描くお仕事小説として、楽しいものになりそうだなと思いました。

企業買収というと経済⼩説というイメージが私の中にありますが、そうではないもっと会社員として働いている⼈みんなが読んで楽しめる話にしたいなと考えました。

M&A Online編集部

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企業買収は買収成立がゴールではなく、そこがスタートとなる。文化の異なる2社の経営を統合する作業がそこから始まるからだ。本作品はフィクションだが、PMIを追体験できる内容に仕上がっている。