資本主義サバイバルシネマ「ザ・コーポレーション」

政府を超える力を持つグローバル企業。それらの企業を人格ある人間としてみた際の異常さと、それが人々や世界にもたらす影響について、各界の著名人の意見を交えながら分析する意欲作。ドキュメンタリー映画監督マイケル・ムーアが出演したことでも話題となった。

あらすじ

良識ある人間の集まりであるはずの企業。法的に人としての権利を与えられた企業の行動原理を精神分析すると、「サイコパス的」な特性を持つことが明らかになる。

発がんの恐れがある遺伝子組み換え牛成長ホルモン薬品rBGHの危険性告発番組の放映をめぐる裁判劇(ポジラック問題)、ボリビアのコチャバンバ市におけるアメリカ企業による水道事業の民営化(コチャバンバ水紛争)など、利益のみを追い求めた企業による様々な社会問題を描き、今後企業がどう未来に向かっていくのかを分析する。

サイコパスと化した企業の醜い姿を描く

企業を構成するのは様々な目的を持つ人々。その人々が集まった結果の企業の特性を、本作では

・他人への思いやりがない
・人間関係を維持できない
・他人への配慮に無関心
・利益のために嘘を続ける
・罪の意識がない
・社会規範や法に従えない

と分析し、”サイコパス(反社会性パーソナリティー障害)”と断ずる。

企業はM&Aによる巨大化、インターネットの発達によるグローバル化により、政府の力を持っても止められない怪物に成長。社会貢献という目的を失い、人々の健康や人生を踏みにじり収益だけを追い求めていく醜い姿が描かれている。

マイケル・ムーアの批判

アメリカのドキュメンタリー映画監督であるマイケル・ムーアは、(皮肉なこととして)企業体質や社会問題を取り上げ反発ばかりする自身の作品が大企業によって配信されていることを挙げる。その理由を「連中は何も信じてないから、売れっ子監督の俺に金を出し儲けようとしか思わない」と語る。ムーアならではの切り口で企業の体質を批判する姿は小気味いい。

経営者側の視点も見たい

本作では経済学者、学生、運動家、番組プロデューサーなど、多くの有識者がそれぞれの立場からインタビューに応えている。企業が巨大な力を持つに至った経緯や、その結果生まれた悲劇を詳細に解説してくれているが、その多くは企業に属さない研究者や被雇用者側の人間であり、企業を経営する側の人間は少ない。本作のテーマが企業の悪行と精神性を弾劾するためのものとはいえ、もう少し経営者側の声も聞いてみたい。

文:M&A Online編集部

<作品データ>
原題:The Corporatio/邦題:ザ・コーポレーション
2004年・カナダ(2時間25分)

ザ・コーポレーション