経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 実話をベースにした作品ではなおさら世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。

多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。

マネートレーダー/銀行崩壊(2001年)

1995年にイギリスの名門投資銀行、ベアリングスが経営破綻した。本作は破綻に追い込んだ実在する元トレーダー、ニック・リーソン(Nick Leeson、1967年2月25日-)の獄中手記を原作としている。ユアン・マクレガー演じる新人トレーダーのニックが名声を手にしながら、いかにして20世紀最大の金融事件を引き起こしたのか。栄光と転落を描いた珠玉のマネードラマだ。

本作のあらすじ

左官屋の息子であるニックは、学閥制の廃止により民間銀行で働くチャンスを得てベアリングス銀行へ就職。赴任したジャカルタでは仕事も成功させた上、美しい女性を妻に迎え入れ、その後シンガポールで念願の取引員として働く。まさに順風満帆の人生を送り始めていたニックだったが、現地で雇った部下が犯したミスの穴埋めのために手を出した不正行為が、その後ニックの人生を大きく変えていく。

一度は危機を乗り越えたニックだったが、再び広がり始めた損失を埋めるために客の資金にも手をつけ、問題を拡大させていく。不正取引を繰り返すニックはやがて身を持ち崩すようになり、阪神・淡路大震災をきっかけにした日経株価指数の暴落により、取り返しのつかない多額の損失を生み出してしまう。

見どころその1:金で変わる人間性

貧しい左官屋の息子であり、実直な青年であったニック。取引所での成功により富と名声を得たことで、女性に侮蔑的な態度をとるような男へと変貌する。またニックの部下となったインドネシアの若者も、高級外車を乗り回し、傍若無人に振る舞うように変化していく。これらの様は、金を得ることが人間性に与える影響を改めて考えさせられる。

見どころその2:ずさんな管理が生み出した結果

不正に不正を重ね、嘘を取り繕い続けたニックがすべての原因ではあるが、銀行側も莫大な利益を生み出すニックに(表面上は)何の疑いも抱かない。何度もチェックを入れるチャンスはあったものの、利益を生むニックを丁重に扱い、彼の行動に深く踏み込まず期待をかけ続ける銀行側の管理のずさんさが、悲劇を大きなものにしていく。

最終的には200年以上の歴史を持つ銀行が消滅する事態となったが、銀行側の管理ひとつでいくらでも防げた事件であったことは言うまでもない。結局のところ銀行側は管理責任を問われず、ニックひとりが全責任を押しつけられ、逮捕される当時の労働者階級の扱いに、背筋に冷たいものを感じる。


<作品データ>
原題:Rouge Trader/邦題:マネートレーダー 銀行崩壊
1999年・イギリス、アメリカ(1時間44分)