「アザー・ピープルズ・マネー」
日本企業による米国企業の買収が盛んだった90年代初頭を舞台に、老舗電信電話会社と企業乗っ取り屋の攻防を描く金融ドラマ。ダニー・デヴィートが、その風貌を活かした小憎らしい演技でやり手の乗っ取り屋を好演した。
企業乗っ取り屋のラリー(ダニー・デヴィート)は創業81年の老舗電話会社・ニューイングランド電信電話会社の買収を目論む。しかし会長のアンドリュー(グレゴリー・ペック)の猛反発、さらにアンドリューの愛人の娘である美人弁護士・ケイト(ペネロープ・アン・ミラー)の手腕により買収は難航していく。
ケイトと接触するうちに女性として、ライバルとして惹かれていくラリーは買収と同時にケイトとの恋の駆け引きにも踏み込んでいく。そして株主総会で、ラリーとアンドリューは最後の決着の時を迎える。
創業81年の歴史と人情に頼り、恋人の娘・ケイトや社長であるウィリアムの忠告や提案に一切耳を貸さなかったアンドリュー。株主総会の演説においても、来るか分からない情勢の変化を頼りにした経営の好転を根拠に会社の存続をアピール。長年工場街を支えてきた実績を背景に、小口株主である住民の情に訴える演説はどこか頼りない。
対するラリーは電線やケーブルに代わる新しい技術・光ファイバーの登場により、さらに会社の経営が厳しくなることを指摘。投資とは利益を得るためのものであり、つぶれ行く会社に投資し損をするよりも、利益を生む企業に投資することで利益も社会貢献も得られると熱弁。その結果、総会での投票はラリーの新代表就任を支持。その後ニューイングランド電信電話会社は、時代の流れそのままに日本企業に買収されていく。
経営を悪化させ株主に損失を与えながらも、歴史と従業員に寄り添ったアンドリューと、株主の利益を訴え、老舗企業をマネーゲームの駒にしたラリー。対照的な両者の姿勢は、経営者として正しいのは誰かを見るものに訴えかける。
ラリーはやり手の企業買収家であり、自社の資金だけでなく他の人間の金も動かしターゲットを落としていく。その結果生み出された利益により、ラリーは豪華なマンションに住み、豪勢な食事に舌鼓、敵方であろうと美人を見れば口説く傍若無人ともいえる振る舞いを見せるが、それらはさらなる成功につながっていく。
まさにアメリカンドリームの体現ともいえるようなラリーの立ち振る舞いだが、”アザー・ピープルズ・マネー(他人の金)”を動かすことを良しとするこの時代の米国の金融業界の姿勢は、やがて起きる世界恐慌につながっていくことを感じさせる。
<作品データ>
原題:Other People's Money/邦題:アザー・ピープル・マネー
1991年・アメリカ(1時間43分)

文:M&A Online編集部
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