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未曽有の経済危機!韓国政府は何をしたのか?『国家が破産する日』

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ⓒ 2018 ZIP CINEMA, CJ ENM CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

1997年7月、タイのバーツ急落に端を発した通貨危機は韓国経済に大きな打撃を与えた。韓国政府は国際通貨基金(IMF)に緊急融資を申請。金融システムは事実上崩壊し、企業の倒産が相次ぎ、多くの自殺者まで出すことになった。

映画『国家が破産する日』は、韓国の通貨危機を「韓国銀行の通貨政策チーム長」「金融コンサルタント」「町工場経営者」の3者の視点で描いた作品である。

『国家が破産する日』のあらすじ

経済が右肩上がりの成長を遂げ、国民の多くが好景気が続くと信じて疑わなかった1997年。中央銀行である韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョン(キム・ヘス)は通貨危機を予測する。しかし政府の対応は遅れ、国民には公示せず、非公開の対策チームを招集したときには、タイムリミットの国家破産まで残された時間は7日間だった。

時を同じくして、危機の兆候を独自にキャッチした金融コンサルタントのユン・ジョンハク(ユ・アイン)は、一世一代の大勝負に出る。

一方、何も知らない町工場の経営者ガプス(ホ・ジュノ)は、大手百貨店からの大量発注を手形決済という条件で受けてしまう。自国通貨の価値が加速度的に下落する中、彼ら、そして国家は生き残ることが出来るのか。

対応が後手に回る韓国政府ーIMF支援以外に道はなかったのか

1997年1月に韓宝(ハンポ)鉄鋼が倒産し、7月には起亜(キア)自動車が不渡りを出す。その頃からタイを中心にアジア通貨危機が始まり、韓国でも海外資金が引き上げられていった。

本作では早くから危機に気づいた人物として、韓国銀行の通貨政策チーム長であるハン・シヒョンが登場。対策を講じない上層部に業を煮やして、銀行トップに直談判しに行くところからスタートし、物語を牽引する。

チーム長を女性に設定したことで、報告書が軽んじられていたことがより鮮明に浮かび上がった。さらに部下を従えて乗り込むハン・シヒョンの殺気さえ感じる必死な形相に事態の深刻さが伝わってくる。

ようやく状況を理解した銀行上層部が大統領府を説得。対策を講じる方向に進むかと思われたが、財政局次官の抵抗に直面する。早く国民に事態を知らせ、自力で危機を乗り越える道を探ろうとするハン・シヒョンに対し、財政局次官は混乱を招くだけと一蹴。IMFへの支援要請を提案する。韓国には構造改革が必要と考え、国民ではなく国家の将来を優先したのだ。しかも、そこには個人的な思惑まであった。

結果として韓国はIMF支援を受けることになるのだが、そこまでに至るハン・シヒョンの必死の抵抗と財政局次官の強引な根回し、一切の譲歩を拒否したIMF専務理事の圧倒的な対応を息詰まる緊迫感で描く。そして、IMF設立の目的に反する支援条件の裏にアメリカの影をちらつかせ、IMFの実態にも斬り込む。

IMF専務理事に扮するのはハリウッドでも活躍するフランスの国民的スター、ヴァンサン・カッセル。韓国映画は初出演だが、強烈な存在感を余すことなく示した。


苦境をチャンスに利用した人も・・・

当時の平凡な庶民を代表する役どころである町工場の経営者ガプスは、政府の見通しを素直に信じて苦境に陥る。そして、断腸の思いで倒産寸前の企業が振り出した手形を取引先への支払いに使ってしまうのだった。

不渡り手形をつかまされた取引先の社長はどうなるのか・・・。ガプスを演じたホ・ジュノが追い詰められた零細企業の社長の悲哀をにじませる。

その一方で、経済危機を“チャンス到来”と利用した者もいる。

金融コンサルタントのユン・ジョンハクは、ラジオ番組で放送された主婦の生活苦に対する愚痴投稿を聞き、経済危機に気づく。仕事を辞め、セミナーを開いて自説を紹介。もうけ話に乗った顧客とともにドル買いに走った。

そして韓国政府がIMFに支援を求めると予測し、儲けたお金で不動産を買い漁り、一気に上昇気流に乗る。初めは半信半疑だった顧客も、ユン・ジョンハクの予想通りの展開になるにつれ浮かれていく。それとは裏腹に、ユン・ジョンハクの中に政府に対する失望感が湧きあがってきた。ユン・ジョンハクを演じたユ・アインが複雑な胸の内を陰りのように感じさせる。

本作の最後に、20年後の韓国が映し出される。IMFの支援で国家破産は回避したものの、貧富の差や非正規雇用といった社会問題を抱えることとなった。不都合な事実の隠蔽や情報操作が国民の暮らしを追い詰めていく。決して他人事では済まされない教訓だ。

文:堀木 三紀(映画ライター)/編集:M&A Online編集部

<作品データ>
『国家が破産する日』原題:국가부도의 날/
監督:チェ・グクヒ
出演:キム・ヘス、ユ・アイン、ホ・ジュノ、ヴァンサン・カッセル
2018年/韓国映画/114分/カラー/5.1chデジタル/ビスタ/
配給:ツイン
©2018 ZIP CINEMA, CJ ENM CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://kokka-hasan.com/
2019年11月8日(金)シネマート新宿、シネマート心斎橋 ほか 全国順次ロードショー

国家が破産する日


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