アップル信者必見!『スティーブ・ジョブズ 自由の精神』

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt

Apple(アップル)の創立者、スティーブ・ジョブズの素顔に迫るドキュメンタリー『スティーブ・ジョブズ 自由の精神』。Mac、iPhone、iPadなどのハードウェアに加えてiTunes、Apple TVなどのソフトウェアサービスを展開するIT界の巨人Apple。その偉大なる創業者は、斬新な商品とサービスを生み出した工業デザイナーという職人ながら、アニメーションスタジオのピクサーを創業するなど、起業家・実業家としての一面も持つのは周知の通り。

スティーブ・ジョブズは2011年に56歳の若さでその生涯を閉じましたが、早くも2013年にアシュトン・カッチャー主演で、2015年にはマイケル・ファスベンダー主演(ダニー・ボイル監督)で伝記が公開されるなど、映画に愛されている存在でもあります。ドキュメンタリー作品まで拡げてみると、さらに作品数が増え、実に映画的(波乱万丈)な人生であったことが分かります。

関連記事はこちら
「スティーブ・ジョブズ」(2013年・2015年)|一度は見ておきたい経済・金融映画&ドラマ<14>
スティーブ・ジョブスに学べ!大塚久美子社長への「転身の勧め」

キャリアは自宅のガレージから

1955年にカリフォルニアで生まれ育ったジョブズは、シリコンバレーのハイテク産業と近郊のサンフランシスコで花開いたヒッピーという二つのカルチャーに触れることになります。

大学をドロップアウトし、ヒッピーコミューンやカウンターカルチャーの中に身を置きつつもジョブズは、“大企業が持つ抑圧の道具”であるとしてヒッピーの中では忌避されていたコンピュータテクノロジーに興味を持つようになります。

アップルの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアックと出会ったジョブズは、次第にコンピュータ開発している人々と交流を持つようになります。彼らは有益な情報を共有し、マシンやソフトを自作しては披露しあっていました。

そんな中で、世界初のPCといわれる「Apple Ⅰ」のひな型となる機体が誕生します。それは1976年のことで、開発拠点はジョブズの自宅の車庫(ガレージ)でした。翌年(1977年)にはウォズニアックが設計したカラー表示の家庭用コンピュータ「Apple Ⅱ」を発売し、1億5000万ドルを稼ぎだす大ヒット商品となりました。1980年に株式を公開すると、アップルは20億ドルの企業価値がつきました。

一方で、当時ハードウェアの雄だったIBMが本格的にIT業界へ進出。IBMへ対抗するため、ビジネスのノウハウを持つ人間を求めて、ジョブズはペプシからジョン・スカリーをアップルのCEOに迎えます。そして、1984年に「Macintosh(初代)」を発表。手ごろな値段にマウスとアイコンで操作する現在のPCの形が出来上がります。ジョブズは様々なテクノロジー、アイデアを結び付けて人々に普及させることに成功したのでした。

日本に憧れたジョブズ

日本食が好きで、禅にも通じていたジョブズはソニーの創業者である盛田昭夫を尊敬していて、彼の生み出したウォークマンに憧れに近い感情を抱いていたそうです。見えるモノだけでなく見えない部分にも美しさを求めるというジョブズの美学は、やがて完璧主義に繋がっていきます。

ジョブズは自社製品に圧倒的な自信を持っていましたが、売り上げは想定の半分に届くかどうかという状態になり、業績は悪化、ジョブズはアップルから追われることになります。しかし彼はその後もハイスペックのコンピュータ開発に携わり、CGアニメーションスタジオのピクサーにも投資。ピクサーは初の長編CGアニメーション映画『トイ・ストーリー』を発表し、世界的な大ヒットを記録しました。

その一方で、ジョブズのいないアップルは苦戦を強いられ、IT業界の主導権はビル・ゲイツが率いるマイクロソフトが握ることになりました。11年の時を経てアップルはジョブズを呼び戻します。しかも当時のアップルは、10億ドルの赤字を抱えている状態でした。

業績を立て直すためにジョブズは当時としては画期的なデザインのデスクトップPC「iMac」を発表。インターネットの普及と重なり大ヒット商品となった「iMac」は莫大な利益をもたらします。iMacのデザインを担当したジョナサン・アイブはその後、ジョブズの重要なパートナーとなっていきます。

コンピュータに興味がない人たちの間でも、コロンと丸みを帯びた形状とカラフルなデザインが支持され、iMacを購入していきます。この頃、パッケージとマーケティングを重視するジョブズのスタイルが確立されました。

21世紀に入り、アップルはPCに次ぐ新しいデバイスの開発を密かに始めます。「iPod」の登場です。iPod、iTunesそしてiPhoneの大成功は改めて語るまでもないでしょう。

世界中のアップルストアは一種の聖地となり、ジョブズ亡きあともその信念が形になっています。ヒッピー文化の自由さを知った上で、全てを支配するジョブズ。この独特な二面性がジョブズ亡きあともアップルの理念として生き続けているのです。

ボブ・ディランとビートルズ

スティーブ・ジョブズ 自由の精神』は1時間弱(49分)とやや中編ではありますが、非情に中身が濃く、見応えのある作品になっています。

映画では、ジョブズがファンだと公言していたボブ・ディランやビートルズ繋がりで、ボブ・ディランの楽曲が挿入されていたり、共同創業者のウォズニアックとジョブズの関係性をジョン・レノンとポール・マッカートニーに例えるなど、ジョブズ・フリーク(オタク)には、ニヤリとさせる遊び心のある演出も。音楽配信について苦言を呈するポール・マッカートニーのインタビューを挿入する辺りはかなり確信犯的な演出と言えるでしょう。

文:村松健太郎/編集:M&A Online編集部

<作品データ>
スティーブ・ジョブズ 自由の精神
STEVE JOBS BILLION DOLLAR HIPPY
2011年/イギリス・49分

スティーブ・ジョブズ 自由の精神

NEXT STORY

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5