1995年公開の映画『エンパイア・レコード』は、アメリカの片田舎にあるレコード店を舞台にした、若者たちの恋と情熱を描いた青春群像劇。職場が吸収合併されるのを阻止しようとする店員たちの奮闘をコメディタッチで描く。 

『アルマゲドン』『ロード・オブ・ザ・リング』のリブ・タイラー、『ブリジット・ジョーンズの日記』『シカゴ』のレネー・ゼルウィガーがブレイクする前に共演した貴重な一作。

 

90年代の空気感を味わって

自由な雰囲気が人気のレコード店「エンパイア・レコード」には、落ち目のアイドル歌手・レックス・マニング(マックスウェル・コールフィールド)に恋する優等生・コリー(リヴ・タイラー)と親友のジーナ(レネー・ゼルウィガー)、コリーに思いを寄せる画家志望のA・J(ジョニー・ホイットワース)、衝動的にスキンヘッドにするデブラ(ロビン・タニー)など、個性豊かな店員たちが集まっていた。

店員ルーカス(ロリー・コクレーン)は初めて任された閉店作業の晩、当日の売上金9,000ドルをもってカジノへ。一度は18,000ドルまで増やすが、二度目の挑戦であえなく失敗し、全額をカジノに吸い取られてしまった。翌日、店長のジョー(アンソニー・ラバリア)は銀行からの連絡で、前日の売上金が入金されていないことを知る。

出勤した店員を集めると、ジョーは大手レコードチェーン「ミュージック・タウン」の従業員規約を配り、エンパイア・レコードのオーナー・ミッチ(ベン・ボード)が、ミュージック・タウンへ店を売却すると明かした。ジョーは共同経営者となってエンパイア・レコードを守ろうとしていたが、ルーカスが売上金を盗んだためにその計画も頓挫。しかし実はルーカスも店の売却を阻止するため、売上金を元手に資金を稼ごうとしていたのだった。

失った売上金を補填するため、店員たちがカンパを集めるも、9,000ドルには遠く及ばない。そこでお調子者のマーク(イーサン・ランドール)が、店を救うためのチャリティライブを発案。街中の若者やアーティストを巻き込む一大パーティが開催されたのだった。

個性的なスタッフたちが織りなす自由な空気が支持されるエンパイア・レコード。売却先であるミュージック・タウンは対象的に、規約や制服など画一化された、大手チェーンらしい企業文化だった。

結果的にチャリティライブの成果により、失った売上金を無事に補填。しかもパーティのムードに嫌気がさしたミッチが店をジョーへ譲り渡すこととなり、エンパイア・レコードの文化は守られた。

真逆の企業文化ー買収されたらどうなる?

もし予定通りに進められていたら、この吸収合併は成功していたのだろうか。ミュージック・タウンは豊富な資金力を活かし、レックスのような落ち目の元アイドルではなく、売れっ子のアーティストを招いたストアライブを開催できるようになるかもしれない。しかし、エンパイア・レコードのようなマニア好みの音楽で共に踊り狂い、膝を突き合わせて音楽論をぶつけ合えるような場を求める熱狂的なファンはいなくなるだろう。

外部から多くの客を呼べる可能性をとるか、店を愛する地元ファンか。どちらの選択もある意味”正しい”なかで、買収する難しさをこの作品から実感できるだろう。

各々が問題を抱えながらも、未来に向かい日々を懸命に生きる登場人物たち。彼らを見て、エネルギーに溢れながらも不安定だった自身の青春時代を重ね合わせる人も多いことだろう。

若い世代には90年代のグランジファッションが新鮮に感じるかもしれない。彼らが見せる、何も考えていないような底抜けに明るい姿から「いろいろあるけど、明日も頑張ろう」と誰もが元気をもらえる一作である。

文:M&A Online編集部

エンパイア・レコード

<作品データ>
Empire Records / 邦題:エンパイア レコード
1995年・アメリカ・90分