いま話題の”ハッキング”を扱った92年の映画『スニーカーズ』

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”ハッキング”をテーマに扱った先進的な作品

Facebookから5億3300万人分のユーザーデータがハッキングフォーラム上に公開されているようだと各社が報じています。ITの目覚ましい進歩とともにハッキングやデータ漏洩、改ざんなども爆発的に増えているそうです。

本日ご紹介する『スニーカーズ』は、そうしたまさに“セキュリティーシステムへのハッキング”を題材にしたクライム・アクション作品。映画が公開されたのが1992年ですから、その時代にこのようなハッキングをテーマに扱ったというのは、かなり先進的と言えるでしょう。

1990年代前半はIT黎明期。Windows95が発売される前ですから、インターネットも一般的ではありませんでした。GAFAの一角であるAppleとMicrosoftは創業されていましたが、Amazonの設立が1994年、Googleの創業が1998年、Facebookの創業が2004年ですから、まだまだ“IT”というものがどんなものか?という様な時代に作られた作品です。

映画に登場するコンピューターや他のガジェット、ファッションなど今となっては懐かしいというかアナクロニズムさえ感じさせます(パソコンのなんと巨大なことか!)。

映画全編で展開される彼ら=スニーカーズの仕事ぶりは、後の『ミッション:インポッシブル』シリーズを彷彿とさせるチーム頭脳戦となっていて見応えたっぷりです。ちなみに原題でもある「Sneakers(スニーカーズ)」とは、足音を立てずにこっそりと歩く人たち、卑劣な奴ら、という意味です。

ラストに語られる“情報”がすべての武器にとって代わるという予言のようなセリフが非常に印象的です。スニーカーズの手法は今となっては信じられないほどアナログなのですが、アナログとハイテクの狭間の時代に生まれたちょっと不思議な立ち位置の一本として楽しめます。

『スニーカーズ』のあらすじ

マーティン・ビショップ(ロバート・レッドフォード)はハイテク機器を駆使して雇われた企業のビルに侵入し、セキュリティーシステムの盲点を検証するプロフェッショナル集団のリーダー。そんな彼のもとにNSA(=国家安全保障局)の職員を名乗る男たちが現れる。

彼らは天才的な数学者ネックが開発した黒い箱を手に入れて欲しいと要請。対価としてマーティン等の過去の犯罪歴を抹消した上に多額の報酬を支払うことを約束する。

仕事を引き受けたマーティンと仲間たちは、難なくその黒い箱を盗み出すが、それは世界中のどんなデータの暗号でも瞬時に解いてしまう解読器だった。やがて、彼らはこの依頼の裏に大きな陰謀が隠されていることを知る…。

豪華なキャストも見どころのひとつ

過去に犯罪歴や不祥事など“脛に傷を持つ”集団であるスニーカーズの面々は、個性的なキャラクターが並び、映画に彩りを与えてくれます。

主演のロバート・レッドフォード以下、アカデミー賞俳優のシドニー・ポワチエ、『ゴーストバスターズ』シリーズのダン・エイクロイド、『スタンド・バイ・ミー』のリバー・フェニックス、『シンドラーのリスト』のベン・キングスレー、話題作『ノマドランド』にも出演しているデヴィット・ストラザーンなど、オールスターが勢揃いしています。

公開当時は“IT”をはじめとする用語や仕組みに世間も馴染みがないこともあって、説明的なセリフが多かったりする点が気になりますが、キャストの工夫もあって、平坦な印象は一切感じさせません。

当時すでにトップスターだったロバート・レッドフォードは自身のネームバリューを活かして若手有望株の俳優をピックアップし始めていて、本作ではリバー・フェニックスがその枠を務めています。

レッドフォードは俳優としてだけでなく、1980年には『普通の人々』でアカデミー賞の作品賞と監督賞を受賞するなど映画製作者としても実績を残しています。自身が主催するサンダンス映画祭からは多くの才能(コーエン兄弟、スティーブン・ソダーバーグ、ライアン・クーグラーなど)を輩出しています。

リバー・フェニックスは早逝してしまいましたが、『スニーカーズ』と同年に公開されたレッドフォード監督作品の『リバー・ランズ・スル・イット』では、ブラッド・ピットを主役に抜擢。レッドフォードとブラッド・ピットとはその後も『スパイ・ゲーム』でも共演、事実上の後継者指名作品となっています。

残念ながらロバート・レッドフォード自身は2018年に俳優業からの引退を宣言してしまいました。

本作『スニーカーズ』では『明日に向かって撃て』から『スティング』『大統領の陰謀』などで正統派美男子&スター俳優として地位を確立した後の、“大人の渋み”を纏い始めたころのロバート・レッドフォードを堪能することができます。

文:村松健太郎(映画文筆家)

<作品データ>
原題:Sneakers
監督:フィル・アルデン・ロビンソン
出演者:ロバート・レッドフォード、ダン・エイクロイド、ベン・キングズレー、メアリー・マクドネル、リバー・フェニックス、シドニー・ポワチエ、デヴィッド・ストラザーン
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
公開:1992年
上映時間:126分

スニーカーズ

村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

映画文筆家

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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