『インヘリタンス』急死した父親が遺した意外なものとは

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シャドウハンター』『あと1センチの恋』のリリー・コリンズと『ミッション:インポッシブル』シリーズや英国製コメディーでお馴染みのサイモン・ペッグが共演したスリラー。

監督はマーゴット・ロビー主演の『アニー・イン・ザ・ターミナル』のボーン・スタイン。共演に『ワンダーウーマン』のコニー・ニールセン、『アクアマン』のマイケル・ビーチなどが名を連ねています。

『インヘリタンス』のあらすじ

2008年のある日、ニューヨークの政財界に絶大な影響力を持つ銀行家のアーチャー・モンロー(パトリック・ウォーバートン)が急死します。遺産は妻のキャサリン(コニー・ニールセン)、下院議員の息子ウィリアム(チェイス・クロフォード)、地方検事である娘のローレン(リリー・コリンズ)に相続されることに。

遺言で莫大な遺産とその権限が家族とその周辺の人々に配分されていく中で、ローレンに遺産とは別の“どこかの鍵”と、父・アーチャーが「何かの過ちを犯した」「真実は掘り起こすな」と語るビデオメッセージが渡されます。

「秘密基地の近くにそれはある」という父の言葉から、ローレンは庭の奥にある子供の頃に作った秘密基地の跡地へ向かいます。そこには地下室へと続く鉄の扉があり、父が残した鍵でその扉は開きました。地下室の奥に進むと鎖でつながれた男が一人、死んでいるように見えましたが、ローレンが近づくと男は動き出します。

翌朝、改めて地下室に向かったローレンはそこで、モーガン(サイモン・ペッグ)と名乗る男と対峙。モーガンはモンロー家の事情をよく知る人物でした。

30年間、父・アーチャーによって監禁されてきたと語るモーガンは、ローレンに真実を語る代わりに地下室から解放するよう取引を持ち掛けます。モーガンは取引に応じたローレンに、アーチャーと自身の犯した罪について話り始めます。それは、アーチャーの秘密を守るため、口封じのためにモーガンを監禁し続けたということ。そしてモーガンの口からはローレンが知らなかった父・アーチャーの真の姿を知らされることになり…。

コメディー色を排したサイモン・ペッグの怪演

ショーン・オブ・ザ・デッド』や『宇宙人ポール』などコメディー作品でお馴染みのサイモン・ペッグが、本作では十八番の笑いを封印して、白髪交じりの長髪の謎の男・モーガンを怪演しています。コメディー演技のサイモン・ペッグを多く見ていることもあって、今回のシリアスなモーガン役とのギャップに驚かされます。

映画が突き付ける“良心のあり方”とは

リリー・コリンズ演じるローレンは自他ともに認める有能な地方検事ですが、モーガンに突き付けられた真実を前にして法律家であり、正義の側に立ってきたローレンの中で、気持ちが大きく揺らぎはじめます。

父のアーチャーは特権階級であることを自負していて、その地位を利用して富と名声を得続けてきた人物でした。彼の周りには同じような思考を持つ人が多く、息子のウィリアムも清濁併せ吞むタイプです。

ローレンはそんな父親らに反発し続け、検事の職に就いたはずなのに、モーガンから思いもよらない真実を突き付けられると、気が付けば父と父が残した富と名声に満ちた家族を守ろうとして、自ら裏工作に手を染めてしまいます。

劇中にはローレンと生前の父・アーチャーとの間で特権を持つこと、富と名声を得ることに対して何度も衝突してきたシーンが挿入され、ローレンの良心が葛藤する様を際立たせています。

ローレンが自分の良心の呵責に苛まれながらも下した決断は、さらに意外な結末へと向かい、何とも言えない気持ちになります(6月11日公開)。

文:村松健太郎(映画文筆家)

<作品データ>
原題:Inheritance
配給:クロックワークス
2020年製作/111分/G/アメリカ

INHERITANCE インヘリタンス
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村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

映画文筆家

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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