経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。今回は、同一人物の半生を描いた同タイトルの2本を紹介する。

「スティーブ・ジョブズ」(2013年・2015年)

「スティーブ・ジョブズ」(2013年)
「スティーブ・ジョブズ」(2015年)

2013年版(写真左)は、アシュトン・カッチャー主演。ジョブズの学生時代から1997年にアップルに復帰するまでが主に描かれている。完全ドキュメンタリーではないので演出部分もあるが、ジョブズやアップルの足跡を理解するには十分だ。
一方、2015年版(写真右)は、マイケル・ファスベンダー主演のダニー・ボイル監督作品。マッキントッシュやiMacといった節目となる発表会前のジョブズに焦点を当てて、その気難しい性格や当時ジョブズが置かれた立場、内面に抱える葛藤などをテンポよく描き出している。

【見どころ】

アップル伝説のCM「1984」

2作ともに登場するこのCMは、「エイリアン」や「ブレードランナー」などで知られるリドリー・スコット監督によるもの。まさに映画さながらの作品だ。マッキントッシュの発売を告げるこのCMは、1984年1月のスーパーボウルのCMとして放映された。ジョージ・オーウェル著「1984」を元にし、独裁者(=IBM)による暗黒の未来を、ハンマーを持った女性(=アップル)が打ち砕くというメッセージが込められている。

<2013年版>
ジョブズの先を見る力

2013年版で、友人スティーブ・ウォズニアック(ウォズ)が作ったコンピューターのターミナルボードを見てそこに勝機と商機を見出すジョブズの姿が描かれており、そこからApple創立へとつながっていく。実は、ウォズは当時勤めていたヒューレット・パッカード社の上司に基板を見せて商品化するよう提案していたのだが、その提案は却下されていた。さらに当時ジョブズが勤めていたアタリ社にも打診したというが、そこでも商品化は実現しなかったという。コンピューターが一般家庭にまで普及するほどパーソナルなものになるとは想像すらしていないことがうかがえる。

緊張の取締役会

2013年版は、アップルが単なるギーク集団のスタートアップからIPOを経て株式会社として成長していくダイナミックさがわかると同時に、取締役会の存在の大きさを感じずにはいられない。ジョブズがアップルを追い出されるときも、アップルに戻って再びCEOとなるときも、緊張感たっぷりの取締役会シーンはその根回しの重要性も物語っている。

<2015年版>
こだわりの美意識

2015年版ではジョブズの徹底した美意識が垣間見られる。冒頭の1984年のマッキントッシュ発表会で、胸ポケットのある白シャツを探させるシーンだ。「青いシャツではダメか」と聞かれて、マッキントッシュのベージュに、胸ポケットから出すフロッピーディスクはブルー、だからシャツは白でなければならないという独自の美意識を貫く。
また、ウォズに説得され、AppleIIはオープンシステムでユーザーがカスタマイズできるようにしたが、マッキントッシュはクローズシステムで他社製品と互換性のないもの。まるで、他者との関係性を築くのが苦手なジョブズ自身のようだ。ただ、そこに唯一無二の美しさが存在することも否めないだろう。

ジョブズの「現実歪曲フィールド」

2015年版で触れられているジョブズを象徴するキーワード「現実歪曲フィールド」。皆が実現不可能だと思っていることを実現できると思わせる、ジョブズのカリスマ性を表現した言葉だ。この力によって、現在のアップルがあるとも言われている。製品発表のプレゼンの場が「現実歪曲フィールド」内であったことは間違いなく、それらの舞台裏の物語で構成・脚色されたこの映画自体も「現実歪曲フィールド」の一環として制作されたと深読みすることもできそうだ。

父親としてのジョブズ

2015年版では、学生時代の恋人、クリスアンとの間にできた娘・リサとの関係にもスポットが当てられている。最初はかたくなにリサを認知しなかったジョブズだったが、AppleIIの次に開発したコンピューターに「Lisa」と名付けた。当初公式発表されていた名称の由来は“Local Integrated System Architecture”だったが、その後ジョブズ本人が娘の名前からとったと述べている。
父と娘の間にあった確執が時を経てどう変化していくのか。iMacの発表会前の父娘のやり取りには、グッとくるものがある。

文:M&A Online編集部