イギリス・ロンドンの暗黒街に、一代で大麻王国を築き上げたマリファナ・キングのミッキー。そんな彼が、総額500億円にも相当するといわれる大麻ビジネスのすべてを売却して引退するという噂が駆け巡った。その噂を耳にした強欲なユダヤ人の大富豪、ゴシップ紙の編集長、ゲスな私立探偵、チャイニーズ・マフィアにロシアン・マフィア、さらには下町のチーマーといったワルまでもが一気に動き始める。
莫大な利権をめぐり、紳士の顔をした彼らが、互いの裏の裏をかきあうスリリングな駆け引きを展開してくことに・・・。
『シャーロック・ホームズ』『コードネームU.N.C.L.E』のガイ・リッチー監督による群像クライムサスペンスの『ジェントルメン』が公開となりました。
ミッキー役を『インターステラー』『ダラス・バイヤーズクラブ』などでおなじみのアカデミー賞俳優マシュー・マコノヒーが演じ、共演にはチャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、コリン・ファレル、ヒュー・グラントなど米英の豪華なキャストが顔を揃えました。本作品を一言で表すとすれば、通好みの演技合戦が楽しい群像クライムサスペンスでしょうか。
主役のマシュー・マコノヒーの好演もさることながら、ボクシングのコーチを演じるコリン・ファレルやゲスな私立探偵を演じるヒュー・グラントの変身ぶりにも注目です。彼らが役自体を楽しんでいる感覚が伝わってくるので、見ていてこちらも楽しくなります。
監督のガイ・リッチーはマドンナと結婚していたこともあり、ロバート・ダウニー・ジュニア&ジュード・ロウの『シャーロック・ホームズ』シリーズや、実写版の『アラジン』も手掛ける万能型のエンタメ監督です。
ただ、そのキャリアを辿ると、PVやCMの監督として実績を積んだ後で、1998年に『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で長編デビューします。
その才能に惚れこむ人は多く、『スナッチ』の時には長編2作目にも関わらず、ブラッド・ピット、ベネチオ・デル・トロ、ジェイソン・ステイサムといったビッグネームが積極的に手を挙げて企画に参加しました。
日本でもクドカンこと宮藤官九郎がファンを公言していて『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』など自身が手掛けたドラマへの影響を認めています。
今年で52歳になるガイ・リッチー監督ですが、丸くなる気は一向になく、今が全盛期だと言わんばかりです。
得意ジャンルへの原点回帰は、一歩間違うと“守り”に入った懐古主義路線になりがちですが、ガイ・リッチーの場合はむしろ”攻め”の姿勢を感じさせるものになっています。
文:村松健太郎(映画文筆家)
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