『イルミナティ 世界を操る闇の秘密結社』世界最大の闇の権力に迫る

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©Praetorian Motion Pictures

都市伝説・陰謀論の世界では黒幕(フィクサー)と称されるフリーメイソンの研究家でもある映像作家のジョニー・ロイヤルが、イルミナティをテーマにした禁断のドキュメンタリー映画『イルミナティ 世界を操る闇の秘密結社』を完成させました。本作でイルミナティという秘密結社は「誰が、何のために創ったのか」、「200年以上の長きにわたる世界と人類の歴史にどのような影響を与え続けたのか」が明らかになっていきます。

イルミナティ―とは

イルミナティ(Illuminati)は、オカルト好きや都市伝説・陰謀論の愛好家たちには欠かせない存在であり、秘密結社のフリーメイソンをも支配すると言われる世界最大の権力者集団です。トム・ハンクス主演で映画化されたダン・ブラウン原作の『天使と悪魔』やスタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』にも登場しました。

大学の私的サークルから始まった

映画の冒頭は、イルミナティの創設から追っていきます。英国の小説家メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』の舞台としても知られるインゴルシュタット(ドイツ・バイエルン州)の街で、イルミナティは創設されました。

1776年にインゴルシュタット大学教授で法学者でもあるアダム・ヴァイスハウプトと6人の学生が私的サークル「完全論者の教団」を創設、フリーメイソンの位階制度を取り入れ、厳格な道徳律を持った組織を目指しました。ヴァイスハウプトは過去の秘密主義を持った結社や、啓蒙運動を目指した結社を見本に活動の幅を拡げていきました。

ヴァイスハウプトは、育ての親がイエズス会の検閲官だったことから禁書を読むことの出来る環境にあり、当時の常識(すなわち、教会=カトリックの常識)に疑問を持つようになっていきます。

成人するとヴァイスハウプトはインゴルシュタット大学で博士号を取得、進歩的な学者として教会法を教え、保守的な教員たちと対立していきます。そこで彼は対抗策として旧来の教会支配から脱した形で人々が生きていくことを目指すようになります。

そして大学内の学生団体として後のイルミナティを結成します。ここで登場する歴史学者や識者の発言で面白いと感じたのは、「保守的な思想があらゆる場面の隅々まで浸透してしまっているがゆえに、リベラルな思想を持つことは秘匿しなくてはいけなかった」という見方です。当時の歴史・社会背景がリベラルなのに秘密主義という相反する要素を一つの組織に持たせることになりますね。

フリーメイソンとの違い

その後、ヴァイスハウプトはフリーメイソンにも入会して、イルミナティへの勧誘活動はオーストリア・イタリア・パリ・ワルシャワなどへと拡大していきます。この接点が後々の都市伝説・陰謀論にイルミナティとフリーメイソンが並んで登場する理由なのかもしれません。

ただし、フリーメイソンの会員は自称することができますが、イルミナティでは許されておらず、「秘密を持つ組織(のフリーメイソン)」と「秘密結社(のイルミナティ)」の違いがここで出てきます。

©Praetorian Motion Pictures

徐々に勢力を拡大するイルミナティですが、教会の教義を基にして活動する組織との敵対関係になることもありました。そのため組織防衛と拡大のため、イルミナティはフリーメイソンとの同一化を更に推し進めていきます。

映画のインタビューの中ではフリーメイソンの中には14人のアメリカ大統領がいて、独立宣言に署名した者もまたフリーメイソンが多かったと発言しています。イルミナティとフリーメイソンが同一視されているがゆえにイルミナティが世界を支配しているという俗説が出るのだと語られています。

映画では当時ブームとなっていた秘密結社の活動に危機感を覚えたバイエルン政府が、1780年代に秘密結社の会合を禁じるようになり、ヴァイスハウプトも大学を追放され、イルミナティが解散に追い込まれたことを記しています。また、多くの識者が18世紀後半にはイルミナティは活動を終了したと認識しています。

イルミナティはまだ存在するのか

しかし、今なおイルミナティが世界を裏側から操っていると信じる人たちがいます。様々な秘密結社がイルミナティに紐づけられて語り続けているのです。それは創設当初に持っていたリベラルな感覚が、現代の大きな思想の流れ(グローバリズムなど)と共通する部分があるからなのかもしれません。

映画の中でインタビューに答える人たちはいたって穏やかで、ある一つの文化・風習、思想のはじまりからを当時の社会情勢と併せながら知ることができる丁寧なドキュメンタリーに仕上がっています。そして、イルミナティは秘密主義を持ちながらも陰謀論で語られるような怪しげな結社ではないと言い切っています。

理想を抱えながらも時に人間臭さや人間関係の混乱が起きたりするところは、今も昔も組織のあり方として変わらないものがあるのだと思いました。こういった部分が人の好奇心を刺激し続け、イルミナティが語り続けられる理由ではないでしょうか?

邦題やキャッチコピーは煽情的な文字が並びますが、これは『NETFLIX/世界征服の野望』も手掛けた映画プロデューサーの叶俊太郎の差配による宣伝戦略の一環です。特に刺客などは襲ってきませんので、安心してご鑑賞ください。(2021年2月5日公開)

文:村松 健太郎(映画文筆家)

作品データ

原題:Illuminated
監督:ジョニー・ロイヤル
配給:TOCANA
2019年製作/76分/G/アメリカ
公式サイト:https://illuminati-movie.com/

イルミナティ
©Praetorian Motion Pictures


村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

映画文筆家

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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