「鉄道×映画」は最高の組み合わせ『名探偵コナン 緋色の弾丸』

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©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

1年の空白を経て、公開される劇場版『名探偵コナン』シリーズ第24作となる『緋色の弾丸』。真空超電導リニアモーターカーと国際的なスポーツ大会という現実の出来事と重なる要素も多い娯楽サスペンスに仕上がっています。

本作では、人気キャラクターのFBI捜査官・赤池秀一(=沖矢昴)、女子高生探偵・世良真純、天才棋士・羽田秀吉、秘密を抱える謎の少女・メアリー世良がキーパーソンとして登場します。

あらすじ

世界最大のスポーツの祭典「WSG-ワールド・スポーツ・ゲームス-」の記念すべき東京開催を迎えようとしている日本。その開会式に合わせて、日本の技術を総結集した最高時速1000キロメートルを誇る「真空超電導リニア」が新名古屋駅と東京に新設される芝浜駅間に開通することが発表された。しかし、華やかなイベントの裏では犯罪計画が進んでいた。コナンとFBIはその計画を阻止するために動き出す…。

ロケットスタートも緊急事態宣言が冷や水に

本来は2020年の4月17日公開予定だった『名探偵コナン 緋色の弾丸』。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって丸々1年延期され、2021年4月16日に公開となりました。

『緋色の弾丸』の公開3日間の興行収入は22.1億円、観客動員は153万人というロケットスタートとなりました。前作の『紺青の拳』(最終興行収入93.7億円、スタート3日間興行収入18.8億円、観客動員18.8億円)と比較してみると、『緋色の弾丸』は興行収入では117%、観客動員では105%となります。

さらに興行収入141.9億円を稼ぎ出した『天気の子』と比較しても興行収入で134%、観客動員で133%となり、これらの数字から『緋色の弾丸』は興行収入100億円という大台を射程圏内にとらえ、業界内から注目を集めていました。

ところが、4都府県に緊急事態宣言が発出されたことで、都内や大阪などの映画館が閉館となり、書き入れ時のゴールデンウイークの興行収入に影響が出ています。

©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

鉄道映画としても楽しめる

「鉄道・列車」と「映画」は非常に相性が良く、現在の映画の形を生んだフランスのリュミエール兄弟が世界で初めて有料上映したと言われるものも『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年)という列車が到着するドキュメンタリーフィルムでした。

また、サイレント映画の初期にもエジソン社が制作した『大列車強盗』(1903年)という作品があり、こちらは世界初の西部劇といわれています。

列車は限定空間が一方向に進んでいくモノですが、映画と映画館もまた限定された世界が一方向に進んでいくモノです。小説などは途中で読み返すことができますが、映画は一方向でしか物語を味わうことができません。こうした特性もあって、鉄道や列車が使われた映画には名作が多いと言われています。

各国で何度もリメイクされている『オリエント急行殺人事件』、ウイルスのパンデミックをテーマにした『カサンドラ・クロス』、ゾンビ映画の『新感染ファイナル・エクスプレス』、ニューヨークの地下鉄を舞台にしたサスペンス『サブウェイ・パニック』などは映画ファンであれば一度は見ておきたい作品です。

日本映画でも、『新幹線大爆破』や『交渉人真下正義』といった良作があります。昨年秋に公開され、国内の最多動員記録、最高興行収入を記録した『劇場版 鬼滅の刃無限列車編』も鉄道映画ですよね。

今回の『名探偵コナン 緋色の弾丸』も、過去の鉄道映画に連なる一本として、見事に仕上がっています。劇中に登場する真空超電導リニアの描写はアニメーションでしか表現できないものなので、いいアイテムを選んだと思います。今回はIMAXやMX4D、4DXシアターでの上映も決定しているので、ダイナミックな映像を楽しむにはぴったりな一本と言えるでしょう。

コナンを卒業しないファンの存在

劇場版『名探偵コナン』シリーズの大きな特徴として、「ファンが卒業しない」という現象があります。アニメはたいてい子供のころ夢中になり、ある程度の年齢になると卒業し、次は自分の子供を連れてくる、というのが普通の流れです。ですから『ドラえもん』の映画版を久しぶりに見ると、声優が変わっている!という現象が起こるのですが、『名探偵コナン』の劇場版に関してはファンが卒業しません。

オトナに連れてきてもらった後は友人たちと、またはデートムービーの選択肢として残り、そのまま子供を連れて一緒に楽しむという流れが出来つつあります。このように幅広い層から支持されていることもあって、連載開始から22年が経過しても、興行収入も常にハイレベルな状態で、しかも右肩上がりが続いているのです。

目下『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が大ヒットを記録していますが、緊急事態宣言の発出で、ゴールデンウイークの中核作品と思われた本作と『るろうに剣心最終章The final』の雲行きが怪しくなってきました。

現在上映中の近隣の首都圏などでも、夕方の上映回やレイトショーに制限がかかっており、宣言解除後の対応が気になるところです。

本作に限らず”100億円映画”に大人層は欠かせないため、是が非でも取りこぼしを避けたいところです。もちろん新型コロナウイルスの感染拡大は抑えることが大前提ですから、興行と感染対策の難しい舵取りが求められそうです。

文:村松健太郎(映画文筆家)

『名探偵コナン 緋色の弾丸』
原作 青山剛昌
監督 永岡智佳
脚本 櫻井武晴
音楽 大野克夫
出演者 高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、池田秀一、浜辺美波
配給 東宝
公開 2021年4月16日
上映時間 110分
© 2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト conan-movie.jp/

村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

映画文筆家

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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