ITベンチャー企業の隆盛と衰微を描く『ライフ・ドア 黄昏のウォール街』

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ライフ・ドア 黄昏のウォール街』は、ITベンチャー企業の隆盛と衰微を描く経済映画。主演は『パール・ハーバー』のジョシュ・ハートネット。共演は後に007シリーズにレギュラー出演するナオミ・ハリス、『アビエイター』のアダム・スコット。さらに、デヴィッド・ボウイも大物経営者として登場します。

あらすじ紹介

舞台は2000年代初頭のITバブル景気(ドットコムバブル)に沸くアメリカ。弟のジョシュア(アダム・スコット)と共に革新的なITベンチャー企業・ランドシャークを立ち上げたトム・スターリング(ジョシュ・ハートネット)は一躍、時代の寵児に。強気の経営スタイルで業界を代表する会社に上り詰めたトムは、周りの意見にも耳を貸さずに傲慢な態度を取り続けてきました。

その後、ITバブル崩壊を乗り越えたランドシャークでしたが、強引な経営手法によって徐々に経営難に陥っていきます。周囲の心もトムから離れていき、ついにはジョシュアも彼のもとを去ってしまいます。全てを失ったトムはかつての恋人サラ(ナオミ・ハリス)と再会し、自分がどれだけ自己中心的な人間になってしまったかを思い知らされます。果たしてトムは変われるのでしょうか・・・。

ITバブルの当時を懐かしんで

ジョージ・ウォーカー・ブッシュ(息子ブッシュ)大統領の就任やトム・クルーズとニコール・キッドマンの離婚など、当時の時代背景を語る場面は、この辺りの予備知識がないと少し戸惑いを感じるかもしれません。ランドシャークのオフィスには懐かしのiMacが置かれていたりします。

日本人と共演の多いジョシュ・ハートネット

トムを演じるのはジョシュ・ハートネット。最近はハリウッド大作はおろか、俳優業自体にあまり興味が湧かないらしく、新作の話も聞こえてこないのが残念です。どういうわけか『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』で木村拓哉、『BUNRAKU』でGACKT、『オー・ルーシー!』で寺島しのぶ、と言った具合に日本人との共演が多い人であります。

彼が演じるトムは、自信家で傲慢でやり手なIT長者と現実にいそうなキャラクターですが、弱さや脆さも同時に持ち合わせており、それをジョシュ・ハートネットが表情の機微で演じ分けています。

元恋人の建築家サラを演じるのはパイレーツ・オブ・カリビアンのシリーズでティア・ダルマ役を演じたナオミ・ハリス。その後のブレイクを考えると、いいタイミングで捕まえることができたなと驚かされます。

終盤になって大物起業家・投資家として登場するのがデヴィッド・ボウイ。短い出演時間ですが、流石の存在感です。彼の口から、若いビジネスマンの態度や言動を否定する発言が出てくるのですが、これをデヴィッド・ボウイに言わせるとは。ロック界の革命児と言われてきたデヴィッド・ボウイにハーバード卒の保守的な投資家を演じさせるというのはなかなか皮肉の利いたキャスティングですね。

ちなみにこの映画、豪華な俳優陣にもかかわらず日本では劇場未公開作品でした。ちょっともったいなかった気もしますね。88分と短い上映時間を一気に駆け抜ける感じがあって、相応の見応えがあったのですが・・・。

文:村松 健太郎(映画文筆家)

作品データ
原題:AUGUST/邦題:ライフ・ドア 黄昏のウォール街
監督 : オースティン・チック
出演 : ジョシュ・ハートネット、ナオミ・ハリス、アダム・スコット、デヴィッド・ボウイ
88分/アメリカ

ライフ・ドア 黄昏のウォール街


村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

映画文筆家

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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