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【M&A】経産省、公正な買収の在り方に関する指針の原案を公表

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経済産業省(東京・霞が関)

経産省、公正な買収の在り方に関する指針の原案を公表

 経済産業省は、2023年3月28日、買収提案に関する当事者の行動の在り方等に関する指針の原案(「指針原案」)を公表しました。
 指針原案においては、上場会社の経営支配権を得る買収等を対象として、尊重されるべき原則と基本的視点(第2章)、買収提案を巡る取締役・取締役会の行動規範(第3章)、買収に関する透明性の向上(第4章)及び買収への対応方針・対抗措置(第5章)等が記載されており、そのうちの一部の概要は以下のとおりです。詳細については、指針原案(https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/006_03_00.pdf)をご参照ください。

項目 概要
指針の位置付け(1.2) ・ 「公正なM&Aの在り方に関する指針」(2019年)の原則を継承しつつ、公正なM&A市場の確立に向けたさらなる一助とすることを期待。
・ 買収への対応方針・対抗措置については、「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(2005年)の運用状況等を踏まえて、今般見直し。
指針の対象(1.3) ・買収者が上場会社の株式を取得することで経営支配権を得る行為が対象。経営陣からの要請や打診が行われていない中で買収提案が行われる場合(Unsolicited offer/bid に相当)を含む。
3つの原則と基本的視点(2.1、2.2) ・ 上場会社の経営支配権を得る買収一般において尊重されるべき原則として、第1原則:企業価値・株主利益(又は一般株主利益)の原則、第2原則:株主意思の原則、第3原則:透明性の原則の3つを提示。
・ 「企業価値」とは、企業が生み出すキャッシュフローの割引現在価値の総和を表し、定量的概念であることを明記。
取締役・取締役会の行動規範(3.1) ・ 買収提案を受けた場合、対象会社の取締役・取締役会は、会社の企業価値を向上させるか否かの観点から買収の是非を判断するとともに、一般株主が享受すべき利益が確保される取引条件で買収が行われることを目指して合理的な努力を行うべき。
・ 取締役が買収の実行に向けて行動することを決定している局面においては、買収の実行が一般株主の利益に影響を及ぼす蓋然性が高まることや、価格等の取引条件が主な争点となることから、一般株主の利益についてより丁寧な検討が必要。
取締役・取締役会の具体的な行動の在り方(3.2) ・ 具体的な買収提案が記された提案書を受領した場合には、取締役会に付議し、付議された取締役会では、「真摯な買収提案」(具体性・目的の正当性・実現可能性のある買収提案)に該当するかどうかを検討することが基本となる。
・ 特別委員会の設置の要否については、個々の事案ごとに、利益相反の程度、取締役会の独立性を補完する必要性、市場における説明の必要性の高さ等に応じて検討すべき。
買収者による情報開示(4.1) ・ 買収時における情報開示については、大量保有報告書や公開買付届出書による開示のほか、市場内買付けの場合には、公開買付けの対象となっていないが、公開買付届出書における記載内容と同程度の情報提供を行うことが望ましい。
・ 大量保有報告制度の規制の対象とならない段階で、実質株主が明らかでない場合において、買収提案者が実質株主である場合には、自らが実質株主である旨等の情報提供を対象会社に行うことが必要。
対象会社による情報開示(4.2) ・買収が実施される段階においては、取締役会等における検討経緯や取引条件の交渉過程への関与状況に関し、充実した開示を行うことが望ましい。
買収への対応方針・対抗措置に関する考え方(5.1) ・株主が買収者による株式の取得に応じるか否かを判断することが本来在るべき姿であるが、現状は、事案に応じ、企業が買収への対応方針を定め、これに基づき対抗措置を発動することがあり、こうした買収への対応方針については、設計主体が会社であるため、中立的な手続ルールとして機能しないおそれがある。
買収への対応方針・対抗措置に関する考え方(5.2ないし5.5) ・買収への対応方針に基づく対抗措置の発動は、①株主の合理的な意思に依拠すべきであり、②必要かつ相当な方法によるべき。
・会社としては、対応方針の導入を検討する前に、平時から本源的価値を高めるための合理的努力とそれを時価総額に反映させるための取り組みの実施が前提となる。その上で、対象会社は、対応方針の導入が必要と考える場合には、その理由について丁寧に資本市場との対話や情報開示を行い、取締役会の構成の独立性を高めていくべき。

 指針原案は、研究会における議論や検討を踏まえた上で正式公表に至ると思われますが、上場会社の経営支配権を得る買収等における当事者の在り方に関するベストプラクティスを具体的に提示するものとして実務への影響も大きいと考えられるため、引き続き議論の状況を注視する必要があります。

パートナー 大石 篤史
アソシエイト 松尾 博美

森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2023年4月号(第112号)より転載

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