経済産業省は、令和3年度税制改正要望の一環として、自社株式等を対価とする株式取得(例えば、自社株対価の公開買付け等)による買収に応じた被買収会社株主について、株式譲渡益・譲渡所得課税を繰り延べる措置を講じ、この際、事前認定を不要とする等、実効的かつ恒久的な制度とすることを財務省に対して要望しました。

 2019年12月に成立し、2021年春に施行予定の改正会社法では、自社株式等を対価とするM&Aについて、新たに「株式交付制度」が創設されました。これにより、M&Aスキームの選択肢が広がり、日本企業による機動的な事業再構築が促進されることが期待されています。もっとも、株式交付制度の下では、被買収会社の株主に対して、株式譲渡益・譲渡所得の課税が生じることが想定されており、現行法上かかる株主への課税を回避するには、産業競争力強化法上の特別事業再編計画の認定(同法25条。但し、課税繰延べは2021年3月31日までの時限措置)を受ける必要があります。自社株対価M&Aを行う際に株主課税が生じると、被買収会社株主は、買収会社の自社株式等の交付を受けるのみで金銭を受領しないにもかかわらず、株式譲渡益・譲渡所得課税を負担することになるという問題があります。

 そこで、経済産業省は、令和3年度税制改正要望において、事前認定及び期間の定めのない、自社株対価M&Aの株式譲渡益・譲渡所得課税の繰延措置を要望しました。この要望どおりに税制が改正された場合、自社株式等を対価とする株式取得の活用が進むことが期待されます。M&Aの実務に与える影響は非常に大きいと思われるため、今後の動向に注目する必要があります。

パートナー 大石 篤史
アソシエイト 芝村 佳奈

森・濱田松本事務所ClientAlert2020年11月号vol.83より転載