ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という3つの要素にもとづいて、企業を中長期的な観点から総合評価し、投資対象を選定する考え方です。実際に多額の資金を運用する機関投資家などがESG投資を採用することにより、企業の取捨選択を行っています。

そのため、投資される立場である企業サイドにおいても、中長期的な企業価値を高めるためにはESG投資の3要素を意識した経営戦略が求められます。今回は近年注目を集めるESG投資の概要とM&Aに与える影響について考えてみたいと思います。

我が国の年金もESG投資を採用へ

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は日本の年金資産156兆円を運用する世界最大の機関投資家です。そのGPIFが2017年から運用資金の一部をESG投資の評価基準にもとづいて運用し始めています。

もともと環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という3要素が強く意識され出したのは、国連が2006年に公表したPRI(Principles for Responsible Investment、責任投資原則)の中でESGについて言及したことに端を発します。

PRI(責任投資原則)は、故コフィー・アナン元事務総長がイニシアティブを取り、2005年から開発が進められた機関投資家向けの投資原則です。具体的には、機関投資家が遵守すべき6つの原則が含まれており、2006年からは米国ニューヨーク証券取引所にも導入されています。

GSIA(Global Sustainable Investment Alliance、世界持続可能投資連合)が公表するレポートによると、世界におけるESG投資額は2016年時点で22兆8千9百億ドルとなっています。そのうち日本の投資額は4千7百億ドルですが、2015年にGPIFがPRI(責任投資原則)に署名するとともにESG投資に乗り出したことから、次回調査ではさらなる増加が見込まれます。

なお、GPIFが2018年8月13日に公表した「平成29年度 ESG活動報告」によると、すでに1.5兆円のESG投資を実施しています。

ESG投資での判断基準は?

GPIFが具体的に投資対象を選定する際に採用するインデックスは、FTSE Blossom Japan Index 、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数の3つです(MSCIはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルの略称)。これに加え、グローバル環境株式指数もすでに公募し、現在、審査中となっています。

GPIFでは株式の自家運用が禁止されているため、実際の株式運用は外部の運用会社が担当しています。そのため、GPIFは運用会社との間で議決権行使なども含めた対話を重視しています。

また、運用会社と同様、ESG評価会社や指数会社も重要な役割を果たしています。特にGPIFの株式運用では約9割が指数に沿ったパッシブ運用になっているので重要性の高さがうかがえます。