一方、高市氏の場合はその政調会長から、人事権のない内閣府特命担当大臣(経済安全保障)となる。自民党内の序列では「降格」人事だ。
そのためか自身のツイッターで「組閣前夜に岸田総理から入閣要請のお電話を頂いた時には、優秀な小林鷹之大臣の留任をお願い」したものの「翌日は入閣の変更が無かったことに戸惑い、今も辛い気持ちで一杯です」と投稿した。
高市氏は政調会長時代に岸田首相の「1丁目1番地」政策を推進する「新しい資本主義実行本部」の初会合に出席せず、首相は衆院選直後の給付金に関する与党調整を政調会長の頭越しに茂木敏充幹事長へ全面委任して高市氏が不快感を示すなど、両者の関係がぎくしゃくしていた。早くから内閣改造での政調会長交代が取り沙汰されるなど「報復人事」の状況証拠はある。
しかし、経済安全保障を含む安全保障は「タカ派」とされる高市氏にとっての得意分野だ。経済安全保障における(Ⅰ)労働力の適正配置や業務の能率増進や(Ⅳ)業務運営の円滑化といった「合理性」はあり、首相に「適材適所の異動だ」と主張されれば「人事権の濫用」と認定される可能性は低い。
これもサラリーマンの人事に当てはめると、本社で全社を統括していた上級管理職が古巣の開発部門で部下のいない「担当管理職」として現場に戻されるようなものだろう。畑違いの営業や総務部門への異動と違い、「報復人事」と断定するだけの決定的な証拠がない。
一方、高市氏は8月12日の小林前担当相との引継式を中止し、内閣府職員への挨拶(あいさつ)式も欠席した。自民党内からも「嫌なら断ればよかっただけ」と突き放す声が上がっている。サラリーマンならば円滑な業務推進を妨げた「業務命令違反」に問われかねない問題行動と言える。
仮に人事権者に「報復人事」の意図があったとしたら、足をすくわれかねない危険な「挑発行為」だ。サラリーマンは絶対にマネをしてはいけない。
文:M&A Online編集部
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