では、萩生田氏のケースはどうか。萩生田氏は内閣改造について「私がやりたいとかじゃなくてですね、(東京電力福島第1原子力発電所の後処理問題などの)こんな大変なことを人が代わって大丈夫なのか。当然、継続してやっていくことが望ましいのではないかと。一部報道で『骨格は維持する』と出ていて、俺は骨格じゃなかったのかという、こんな思いもございますので」などと、強く残留を希望した。
だが、結局は自民党の政調会長に就任。官房副長官、文部科学相、経産相とマスメディアから注目され露出度が高い「政務」から、いわば裏方の「党務」への異動を打診されての「残留希望」だったのかもしれない。
萩生田氏の場合、安倍・菅政権下での官邸主導で「政高党低」が定着した結果、党三役の政調会長ですら、かつてほどの影響力はないとされる。それでも大臣よりは格上であり、「降格」ではないのは明らか。
もちろん何の権限もない「名ばかり管理職」で体よく左遷という人事もある。が、自民党の政策や国会に提出する法案は、政務調査会の審査を経なければならない。そのトップである政調会長は党の政策の調査研究と立案を決定をする最高責任者であり、「名ばかり」の役職ではない。さらに党の政策のまとめ役であることから、最大派閥である安倍派幹部の萩生田氏が就任する合理性は十分にある。
萩生田氏のケースをサラリーマンの人事に当てはめると、現場でバリバリ働いている営業マンがそのノウハウを組織全体に定着させてもらいたいと会社から管理職就任を命じられ、「私は管理職などやりたくありません。営業の第一線で働かせて下さい」と訴えるようなものだ。本人の意向とは違うが、会社にとっては合理性がある異動で「不当人事」とはみなされない。