「救国の英雄」か「ネオナチ」か?ウクライナ・アゾフ連隊の正体

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アゾフ連隊が奮戦するマリウポリでの戦闘(Photo By Reuters)

ウクライナ東部のマリウポリでロシア軍と激戦を繰り広げているアゾフ連隊(アゾフ大隊とも呼ばれる)。ロシアからは「ロシア系住民を抑圧するネオナチ集団」と批判され、ウクライナ侵攻の「口実」ともなったグループだ。果たして彼らの正体は「正義のヒーロー」なのか?

創立者は極右の白人至上主義者

アゾフ連隊はマリウポリを拠点とする準軍事組織で、2014年2月にウクライナで発生した親ロシア派による内乱に対抗する自警団として発足した。同11月にはウクライナ国内軍を改編して創設されたウクライナ国家親衛隊(警備隊)東部作戦地域司令部の部隊となる。

アゾフ連隊を立ち上げたアンドリー・ビレツキー氏は極右政党のトップで、初期の隊員には極右思想者が多かったという。ウクライナ政府もアゾフ連隊の極右色を懸念して国家親衛隊への編入に当たってアゾフ連隊に「非政治化」を求め、ビレツキー氏ら極右思想指導者は隊を去った。

だがその後、ビレツキー氏はウクライナの極右政党「ナショナル・コープス」を創設。同党はアゾフ連隊関係者が支持基盤となり、現在も同連隊と深いつながりがある。ビレツキー氏は白人国家主義の極右政治家として2014年から2019年までキエフ選出のウクライナ議会議員として活動した。2007年に出版した自著では「ウクライナで民族浄化を断行すべきだ」と過激な主張していたという。

米下院も「ネオナチ」と認定していた

そのためウクライナ侵攻前はロシアだけでなく、西欧諸国でもビレツキー氏を「ネオナチ」と非難し、アゾフ連隊を危険視していた。2015年に米下院が「ネオナチのウクライナ民兵への支援を制限する」として、アゾフ連隊に対する訓練や対空ミサイルを供与する計画を取りやめる修正案を全会一致で可決したほどだ。

しかし、アゾフ連隊はロシアへの抑止力として期待され、米国の支援停止は2018年まで先延ばしにされた。アゾフ連隊が「ネオナチ団体ではない」と弁明したことや、ロシアによるウクライナ侵攻で同連隊の「ネオナチ問題」はうやむやになり、米国からの軍事支援も再開された。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、アゾフ連隊による暴行や拉致(らち)、拷問、略奪、性的暴力などの犯罪行為があったと報告している。住宅街での民間人に対する暴力行為もあったという。2022年2月にはアゾフ連隊の兵士とみられる人物が、ウクライナ国家親衛隊のツイッター公式アカウントにイスラム教徒を侮辱する動画を投稿している。

文:M&A Online編集部

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