事前届出の対象業種を追加ーほぼすべてのIT分野が対象に

政府は外国投資家による対内直接投資の規制強化として、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく事前届出の対象業種を追加した。国の安全保障上重要な先端技術・製品の国外流出や、防衛生産基盤・技術の棄損を防ぐ。ルール改正は2019年8月から適用されている。

追加された対象業種は、情報処理関連の機器・部品製造やソフトウエア製造、情報通信サービス関連の20業種。従来からの対象業種と合わせ、実質的にほぼすべてのIT分野を網羅する。外為法では外国投資家が日本企業の株式取得や日本企業への1年以上の貸付などを行う際、対象業種にかかる場合は日本銀行に対して事前届出を提出するよう規定している。

直接投資は、ある国の企業などが海外で現地法人を設立・拡大する、あるいは既存の外国企業の株式の一定割合以上を取得して経営に参加するといった目的で行うグローバルな資本移動。対内直接投資は国外から国内にもたらされるもので、高度な経営ノウハウや技術、人材などの流入で生産性向上や雇用創出が期待できる。外国企業と国内企業が投資連携すれば、商品開発や人材育成の促進、販路拡大も見込める。

対内直接投資残高を35兆円へ倍増したい日本政府

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2017年末の日本の対内直接投資残高は28.6兆円に上り、4年連続で過去最高を更新した。欧州、北米に次ぎ、シンガポールや韓国、中国などアジアからの投資が大幅に伸びているのが要因。財務省が発表した2018年6月末時点の残高も29.9兆円と、さらに増えている。

政府は2020年までに、対内直接投資残高を2011年末の17.5兆円から35兆円に倍増させようと「アジア拠点化・対日投資促進プログラム」を推進中。補助金や税制などのインセンティブ措置強化、投資を呼び込む特区制度などの活用といった5つの柱を掲げ、24の自治体に対しても戦略的な外国企業の誘致を支援している。

ベンチャー企業の資金繰りや非上場株式取得に影響も

一方、対内直接投資で自国企業が買収されるなどした場合、重要技術や機密情報が国外に流出してしまう恐れも生じる。先端技術のほとんどは軍事転用が可能で、サイバーセキュリティー確保の重要性が高まっていることから、欧米でも対内直接投資の実行を厳格化する動きが強まっている。

ただ、新たに事前届出が必要となったソフトウエア開発や情報処理サービスの分野には、独立系の国内ベンチャー企業も多く参入している。これらの企業の中には、資金繰りを外国投資家からのリスクマネーなどに頼っているケースもある。

外為法の規制対象業種は「事前届の受理日から原則30日間は投資の実行が禁止」と規定されている。「30日間」は当局による法律上の審査期間。実際には、大半の届け出は申請から数日間以内に審査が完了するよう迅速化されているが、対内直接投資を促進する上では、審査期間のさらなる短縮や届け出手続きの簡素化などが求められる。

なお、外為法では、外国投資家が他の外国投資家から日本国内の非上場株式を取得する特定取得も対内直接投資と同様の規制を受ける。今回のルール改正では、特定取得の事前届出業種も対象範囲が拡大された。

文:M&A Online編集部