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アントIPO延期の原因はジャック・マーの「失言」ではなかった

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IPO強制延期の狙いは「アントの信用失墜」

だが、小口融資が何らかの理由で大量に焦げ付くと、リーマン・ショックのように一気に崩壊するリスクもはらむ。しかも、アントは銀行が提携して融資するケースも少なくない。その場合、銀行はアントに資金を提供しており、債務不履行(デフォルト)のリスクを負う。

つまり、アントの小口金融に端を発した「中国金融危機」が懸念されるというわけだ。中国金融当局は9月16日、小口融資を裏付けとするABSの発行枠に上限を設ける指針を発表している。2017年12月にも小口融資事業者に対し、それまで簿外扱いだったABSをバランスシートに含めることを義務づけると発表。その直後にアントがABSの組成を一時停止したこともあった。

金融当局はアント発の「中国金融危機」を恐れた?(Photo by DMCA)

この「ABSデフォルト懸念説」の説得力が弱いのは、この問題が少なくとも三年越しの「案件」であり、これが理由だとすればIPOの動きが出た時点でストップがかかるはずだということ。金融当局がIPOのわずか3日前にストップをかけるとは考えにくいのだ。

この異例のタイミングで金融当局がIPOに待ったをかけるとすれば、狙いはアントの「信用失墜」にあると考えるのが自然だ。これまで金融当局が数々の摩擦がありながらもマー氏とアントの成長を許してきたのは、中国で金融インフラが発展途上だったため。

世界銀行の2017年グローバル・フィンデックス・データベースによると、中国では銀行口座を持たない人口が2億2500万人を超えていた。こうした人たちにとっては、アントの提供するスマホ決済は金融サービスへの唯一の「アクセス手段」だったのだ。

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