争奪戦の構図となっていた福利厚生代行のベネフィット・ワンをめぐるTOB(株式公開買い付け)の帰趨がはっきりしてきた。
第一生命ホールディングスは8日、ベネワンに対するTOBを9日から始めると発表した。ベネワンをめぐっては医療情報サービス大手のエムスリーによるTOBが昨年11月半ばから行われているが、ベネワンがエムスリーのTOBへの賛同を取り下げ、後出しの形で対抗TOBの意向を表明した第一生命の支持に回ったのを受けた。
第一生命はベネワンとその親会社のパソナグループの賛同を前提にTOBを2月中旬をめどに始める予定としていた。当初は1月中旬を目指していたが、ベネワンなど両社との協議が続いていた。買付価格について第一生命はエムスリー側を3割以上上回る2173円を提示している。
ベネワンは8日、第一生命のTOBに賛同し、株主に応募を推奨することを決めた。パソナも「第一生命の提案を受け入れる方が経済合理性が認められる」などとする見解を発表した。
ベネワンはエムスリーのTOBについて、これまでの賛同と株主への応募推奨をそれぞれ留保に変更した。エムスリーはTOB期間を2度延長して2月15日までとしているが、今後、買付価格(1株1600円)の引き上げなどの条件変更を行わない方針で、敗北が事実上決定的となった。
第一生命はTOB開始に際し、ベネワン株の買付価格を昨年12月下旬に提示していた2123円から2173円に50円引き上げた。8日のベネワン株の終値は2085円。
第一生命はベネワンの完全子会社化を目指している。TOBを通じて親会社であるパソナが所有する51.16%を除く48.84%を取得する。パソナの所有分はTOB成立後に、第一生命の資金援助を得てベネワンが自己株式取得(1株1491円)を行う運びだ。
買収総額は2920億5700万円。このうちTOB分は最大1681億円となる。
今回と似たケースでは、2020年秋から年末にかけて、家具・ホームセンターの島忠をめぐる争奪戦が繰り広げられたことが記憶に新しい。
ホームセンター大手のDCMホールディングスが島忠にTOBによる子会社化を発表した。ところが、その後、家具大手のニトリホールディングスが島忠へのTOB検討中を表明したうえで、DCMを上回る条件を提示して参戦した。
渦中の島忠はDCMのTOBへの賛同を撤回。島忠の賛同を得たニトリが総額1600億円超の大型買収に勝利した。
文:M&A Online