会社における株式報酬制度の位置づけ

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4.利用の場面

「1.報酬とは」で述べた通り、報酬は一般的には過去の勤務に対する対価の意味ですが、株式報酬はもっと広い目的のために様々な場面で利用することができます。

採用時
サインアップボーナスを現金で支給することはできますが、資金余力のないベンチャー企業では株式報酬で行うことがよくあります。
例)非上場会社の税制適格SO

業績へのインセンティブ設計
上場会社では株式に流動性があるため、株式報酬を渡すことにより将来の企業価値向上(株価向上)を目的として、将来の働きへの期待にインセンティブを付けることができます。

その際に、企業価値に大きく影響を与えることができるマネジメントに近い層にはハイリスク・ハイリターン、ミドルやメンバー層には一定の利益が確保される株式報酬が向いていると考えられます。
例)上場会社の税制適格SO、パフォーマンス・シェア、株式給付信託

リテンション
勤務条件を付けた株式報酬や株式保有による全社意識、ロイヤリティの向上を目的として株式報酬を付与することがあります。
例)リストリクテッド・ストック、株式給付信託、従業員持株会

退職
マネジメント層には短期の企業価値の向上を追うのではなく、中長期視点で業務を行うようなインセンティブをつけるとともに、退職時に一定の報酬として付与することがあります。
例)退職時役員向け1円SO

このように株式報酬は様々あるとともにその特徴に応じた使い方もいろいろあります。また、今回は述べませんでしたが、各制度について、会社法上、会計上、税務上、金融商品取引法上などの取り扱いも異なっています。

文:泉 光一郎(公認会計士・税理士)
ビズサプリグループ メルマガバックナンバー(vol.101 2019.8.21)より転載

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