さらにユニークなことに、マレーシア国王は終身制でなく5年間の任期制だ。前国王のムハンマド5世は就任から、わずか2年余りで退位した。その背景には国王に義務づけられている公式の説明なしに療養生活に入り、しかもその期間中にミス・コンテストでの優勝経験があるロシア人女性と再婚したなどの個人的スキャンダルがあったとされる。
マレーシアは立憲君主制で、国王による権力行使のほとんどは内閣の助言に基づく。かつて国王は公私にわたって法的免責特権を有していたが、1993年の憲法改正で私的行為の免責特権は廃止された。公務については免責されるが、国王の公務に責任を持つ政府を提訴できる。
今回のような首相の任命については国王が自ら判断できるが、下院で多数の議席を確保した党の代表が首相に任命されることになる。下院で内閣不信任決議が出た場合は、国王が内閣の助言により下院を解散するか、助言を拒否して内閣を解任するかを選ぶ。
今回、アブドゥラ国王から「退場宣言」を突きつけられたマハティール前首相だが、近く開かれる国会でムヒディン新首相の不信任決議案を可決させ、内閣総辞職か解散・総選挙に追い込む政界工作を進めている。目指すは首相への復帰。しばらくはマレーシア政界の混乱が続きそうだ。
文:M&A Online編集部