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【前編】フリージア佐々木ベジ会長 ラピーヌの変革とは

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若い世代を中心に「百貨店離れ」が進む ※画像はイメージ

フリージアグループ・佐々木ベジ会長 単独インタビュー(前編)ラピーヌの変革は「既存顧客が居なくなる前提」

公開日付:2022.05.11

 若い世代を中心に「百貨店離れ」が進み、2020年以降は新型コロナによる消費低迷も深刻だ。メイン顧客のミドル・シニア層の来店機会が減り、百貨店を主戦場にする中・高価格帯のアパレルブランドは冬の時代が続く。
 2020年9月、「不振・倒産企業の再生請負人」として知られるフリージア・マクロス(株)(TSR企業コード:291065422、千代田区、東証スタンダード、以下フリージア社)の佐々木ベジ・取締役会長は、百貨店向け婦人服大手(株)ラピーヌ(TSR企業コード:570221234、千代田区、東証スタンダード)の代表取締役社長に就任した。
 一方、フリージア社は投資先の1社で婦人フォーマル老舗の(株)東京ソワール(TSR企業コード:291181210、東京都港区、東証スタンダード)と経営方針や役員人事を巡り対立。東京ソワールの買収防衛策の発動にまで発展している。
 東京商工リサーチは、百貨店アパレルの現状や東京ソワールとの関係について佐々木ベジ氏に訊いた。

―2020年秋にラピーヌの代表取締役就任から1年半が経過した

 アパレルは依然厳しい環境下にある。だが、2021年の秋冬物から原価低減に取り組み、直近決算は無事黒字で着地できた。粗利率は、私が就任してから10ポイント以上改善した。
 原価低減のために3つの施策を実施した。1つは、仕入業者としっかり交渉すること。従前は(商品が)入ってきた値段の5倍の定価で売る、つまり積み上げ方式を採ってきた。メーカー側も色々と融通を効かせて臨機応変に対応してくれてはいた。一方で、業者持ち込みの企画や先方が売りたい生地の商品など「業者さんありき」の企画も少なくなく、マーケットを無視した状態だった。
 あと2つは「少量多品種生産」からの転換と「ブランドミックス」だ。

※2022年2月期の経常利益(連結)は1億7,800万円の黒字(前年同期は15億9,800万円の赤字)、最終利益は1億5,500万円の黒字(同21億3,500万円の赤字)

取材に応じる佐々木ベジ会長
取材に応じる佐々木ベジ会長©東京商工リサーチ

―少量多品種生産の課題は

 ロットが小さいと1商品当たりの在庫も少なくなり販売機会を逃しがちだ。また、1型あたりの数が少ない分、品物の値段が上がってしまう。これまでは1型あたり数十枚~100枚程度だった生産数を1型あたり数百枚に改めた。一方で、型数を大幅に絞った。
 これまで、ある意味で「顧客中心主義」だった。ラピーヌにも様々な層の顧客がいらっしゃる。その顧客データに沿って商品を作ってきた。ただ、あまりにも顧客が多岐に渡るため、顧客数の割に商品生産の総量は少なかった。既存顧客を意識するあまり、新規顧客を狙ったマーケット向けアイテムがなく、マーケットが求めるものと商品が必ずしも一致していなかった。既存顧客が高齢化すると、将来的な期待は薄くなる。そこで新しい顧客を呼び込めるようにしよう、と方針転換した。

―型数を絞り込めば、ロットを増やせて販売単価は抑えられる

 コストが削減できることで百貨店ブランドとしての品質も保ちながら、従前から3割ほど安い価格で提供できるようになった。トップスで1着1万円台~5万円だ。

―デザインやコンセプトが変わることで既存顧客が離れる恐れがある

 今までのファンはどちらかというと値段を気にせず、「ブランドが好きだ」という方々だった。これを既存顧客が居なくなる前提で、新しいお客様にどう提案していくかを意識した。以前のメイン顧客層は60~70代だが、将来的に減っていく。
 そこで、それより若い世代の方も「欲しい」と思える商品展開にシフトした。第一段階は、通りすがり、店の前を素通りするような方が思わず足を止めてしまうような魅力的な商品を揃える、たまたま我々のアイテムを購入してくださった方にファンになってもらえるように。若い人も年配者も欲しいと思うものはそう変わらない。

―ブランドミックス戦略とは

 ラピーヌには6つのブランドがあるが、商品は6ブランド各々で企画していた。それぞれの顔(ブランド)は大事だが、各ブランドで一部の商品を共通で販売して効率化を図っている。各ブランドそれぞれに売れ筋があれば、他ブランドでも販売することで数が売れる。数が売れるとコストをさらに下げることができる。
 売れる形、売れる色は、ブランド間で重なってしまうケースは結構ある。色や形はトレンドで左右される面があり、まったく別の会社で同じようなデザインの商品を展開してしまうケースもある。同じ会社の別ブランドで同一デザインの商品が並ぶこと自体は問題にはならない。
 ただ、日本人の体形にフィットしたデザインや、好まれやすい中間色の商品の充実、品質、機能性をしっかり考慮、工夫するようにした。今までより、だいぶ踏み込んだ商品企画となっているので、うちのデザイナーも大変になった。

―百貨店アパレルに携わって、現状をどう見るか

 百貨店は売れないままずっと低迷している。百貨店アパレルの商品を企画する人たちもそのムードを引きずり、どうしても元気がなくなってしまう。 そのため、既存顧客頼りの商品ばかりを生み出してしまう。
 その先には商売効率の悪化が待っており、さらに新規顧客も減少する。(百貨店の)フロアを通る人は決まっていて変わらない。その悪循環は業界全体がそうだろう。
 ただ、何だかんだ言っても、百貨店は駅に近く、良い場所にある。そこで何をやるか。アパレルが売るのは「ファッション」という文化で、これは一種の情報だ。「この情報は良い」とお客様に思ってもらうことが肝心だ。なので、我々はお客様が「これだ」と思える形、色、素材、風合いなどを、根拠を持って発信する。その根拠が重要だ。

(続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年5月11日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

東京商工リサーチ「データを読む」より

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