経済産業省は6月26日、大胆な事業再編の実施を支援するための「『スピンオフ』の活用に関する手引き」を改訂した。
2023年度税制改正で大企業発スタートアップの創出などにもつながるパーシャルスピンオフの課税を緩和する特例措置が創設されたのを受けたもので、新たに活用できる施策や実務上の注意点などを挙げている。
「スピンオフ」とは自社事業の特定部門や完全子会社を分離して独立させる事業再編の手法で、親会社の株主に対して新たに設立した子会社か既存の子会社の株式を分配するのが一般的。親会社は市場評価を下げずに子会社や事業を切り分けられ、中核事業に専念できる。子会社も親会社の経営資源を活用しながら、経営の自由度を高められるメリットがある。
国内企業のスピンオフを促進するため、政府は2017年度にスピンオフ税制を施行。一定の要件を満たせば適格組織再編に位置付けられ、再編時の譲渡損益や株主配当への課税が対象外となる。
2018年度税制改正では新設分割に加え、許認可などの関係で事前に完全子会社を設立した上で許認可後に吸収分割する場合も適格分割に該当することになった。
さらに、2023年度税制改正では株式分配に限り、親会社に一部持ち分を残す「パーシャルスピンオフ」についても同様の措置が取られ、2024年3月末まで適用される。
パーシャルスピンオフの主な適格要件は、
1.スピンオフ後に親会社が保有する子会社株式が発行済み株式の20%未満であること。
2.親会社が産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けていること。
3.スピンオフ後に子会社の従業者のおおむね90%以上が、その業務に引き続き従事することが見込まれること。
4.子会社の役員に対するストックオプションの付与などの要件を満たすこと。
といったもの。
一部持ち分を保有しながら段階的に子会社などを切り離すことで、ある程度のシナジーを確保しつつ、企業価値を高めようとする企業などの活用が期待されている。
改訂された手引きでは、パーシャルスピンオフに関する税制措置の解説や海外で実施されたパーシャルスピンオフの事例を加え、スピンオフ時の上場手続きをめぐる東京証券取引所の「新規上場ガイドブック」改訂や新税制に関するQ&Aを追加・更新した。
新税制のQ&Aでは税務、会計などで想定されるさまざまな論点について紹介。例えば、スピンオフされた法人がスピンオフ実施後に他の法人に買収されたとしても、スピンオフの時点で他の法人に支配されることが見込まれていなければ適格要件の判定には影響しないことなどが紹介されている。
スピンオフは戦前から実施されており、親会社の事業から独立したトヨタ自動車や富士通などが国内を代表する企業に育っている。スピンオフ税制の下では2020年、カラオケ事業などを展開するコシダカホールディングスがフィットネス事業のカーブスを営む子会社を切り離して上場する日本初のスピンオフIPOを実施した。
企業価値向上に対する株主からのプレッシャーも強い欧米では自社株対価M&Aと同様、大規模なスピンオフが珍しくない。
2015年7月にはイーベイ(ebay)が100%子会社であるペイパル(PayPal)をスピンオフしたほか、直近の事例では2023年1月、米総合電機メーカーのゼネラル・エレクトリック(GE)がヘルスケア事業部門を含めた3つのグローバル企業に分社化。パーシャルスピンオフに踏み切り、スピンオフした企業の株式19.9%を保有している。
文:M&A Online
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