円安や観光施策を背景に訪日外国人客の需要が拡大 地方でも外国人観光客誘致が課題に

 2013 年1年間の延べ宿泊者数は、全体で4億6,589 万人泊、そのうち日本人が4億3,239 万人泊(シェア92.8%)、外国人が3,350 万人泊(同7.2%)であった。前年比で延べ宿泊者数は6.0%、外国人延べ宿泊者数は27.3%も増加した(※1)。また、客室稼働率を宿泊施設タイプ別で見ると、シティホテル76.2%、ビジネスホテル70.7%、リゾートホテル50.0%となっており、これは観光庁の調査開始以来、最も高い数字となっている(※2)。

 好況の背景としては、LCC(格安航空会社)の新規就航に加え、円安効果と東南アジア向け観光ビザ発給要件の緩和による外国人観光客の増加が大きい。15 年以降も為替水準が円安基調で推移すると予測されることから、堅調な需要が見込まれる。訪日外国人の国籍(出身地)別延べ宿泊者数をみると、フィリピン(前年同期比+101.4%)、中国(同+83.6%)、マレーシア(同+61.4%)、タイ(同+45.3%)などの東南アジアの国々が大幅に拡大しており、この傾向は今後も続くと予想される(※2)。

 政府も国策として「観光立国」を掲げており、MICE(Meeting,Incentive Travel, Convention, Exhibition/Event)と呼ばれる国際会議や企業の研修旅行、イベントなどに関連した法人旅行需要も大いに期待されている。大都市圏の需要はさらに伸びるだろう。業界における最大需要が予想されるのは20 年の東京五輪。これに伴う観光客増を見越して国内事業社に限らず、外資系ホテルも続々と開業や開業準備を進めている。

 
 一方で、訪日外国人の宿泊先は1位の東京都、2位の大阪府、3位の北海道で全体の2分の1以上を占めている。3都道府県以外のホテル・旅館にとって、訪日外国人の誘致は喫緊の課題となっている。

(※1)出典:「宿泊旅行統計調査報告」観光庁
(※2)出典:「観光統計」観光庁14 年9月24日発表プレスリリース

東京五輪を見据えたブランドホテルを巡るM&Aや観光客に人気の北海道内のM&Aが目立つ

 近年のホテル・旅館業界におけるM&Aを分析すると、3つの特徴が浮かび上がってくる。

 一つ目は、20年東京五輪開催を見据え、訪日外国人の取り込みを目指すブランドホテル絡みのM&Aだ。多くの国外、国内のホテル・レジャー事業者が主要エリアのホテルを買収している。15年2月には、米・大手投資ファンドのベインキャピタルが「お台場大江戸温泉物語」(東京都・江東区)など全国29カ所で温泉旅館や温浴施設を運営する大江戸温泉ホールディングスを買収すると発表した。こうしたブランドホテルを巡るM&Aは、これからも大都市圏を中心に活性化することが見込まれる。

 二つ目は、観光・リゾート地のM&Aである。中でも、訪日外国人に人気が高い北海道内のM&Aが目立つが、ほかの主要な観光地でもM&Aが活発に行われている。

 三つ目は、経営不振に陥った地方のビジネスホテルを買収して、事業の拡大を進めるホテルチェーンの動向だ。中堅ビジネスホテルチェーンによる地方の小資本ホテルのM&Aは、今後も活発化すると予想される。

M&A情報誌「SMART」より、 2015年4月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部