投資ファンドのインテグラル(東京都千代田区)が出資している飲食店運営OUNH(東京都新宿区)が、2023年7月28日東京地裁に破産申請をしました。この会社はTBIホールディングスの名前で様々な業態を開発し、駅前の繁華街を中心に居酒屋店を出店していました。
インテグラルは2013年9月に出資をし、過半数の株式を取得しています。出資後のTBIホールディングスは外食上場企業ホリイフードサービス<3077>の株式をTOB(公開株式買い付け)で取得。子会社化していました。
宴会需要が十分に回復せず、一部の居酒屋企業の事業継続リスクが顕在化しています。この記事では以下の情報が得られます。
・OUNH(TBIホールディングス)の特徴
・業績推移
TBIホールディングスの前身となるTBIは、ネパール出身のヴァッタ・ヴァバン氏が2013年に創業。エンターテインメント系の居酒屋店を得意とし、駅前雑居ビルの2階以上など空中階に大型店を出店していました。インテグラルが出資した時点で、78店舗を運営。創業者のヴァッタ・ヴァバン氏は買収後も代表取締役として会社に残ります。後にTBIホールディングスに商号変更しました。
出資後もヴァッタ・ヴァバン氏が1割超の株式を継続的に保有しており、売上高100億円を目指すなど拡大路線を堅持していたことから、上場を強く意識していたと予想できます。
TBIホールディングスはM&Aを積極的に活用して業態の幅を広げ、自社で開発した業態もあわせて多種多様な店舗を展開していました。よく知られている店舗に、しゃぶしゃぶ鍋にわたあめを投入するラムしゃぶの「めり乃」、はちみつかけ放題の創作イタリアン「Bee House」、まぐろ専門店「トラエモン」などがあります。
20~30代の若年層をターゲットとしていたため、グルメメディアや公式ホームページ、Googleマップ、SNSなど、Webをフル活用した集客が得意で、デジタルメディアの一元管理ツールYextを飲食企業でいち早く導入するなど、先進的な取り組みを行っていました。
2017年4月にホリイフードサービスに対してTOBを実施します。22%安いディスカウントTOBで、代表取締役会長からの譲受が中心でした。TOBは成立し、ホリイフードサービスを子会社化します。
ホリイフードサービスは「隠れ菴 忍家」など、個室を中心とした居酒屋店を展開していました。しかし、個室居酒屋はすでに陳腐化しており、集客力を失っていました。同社は2017年3月期に5億200万円の純損失(前年同期は1億1,300万円の純損失)を計上しています。
TBIの業態開発力を活かし、既存店の業態転換などを計画していました。2019年11月にTBIホールディングスの子会社とフランチャイズ契約を締結し、「天ぷら酒場 上ル商店」を出店しています。
ただし、勢いのあったTBIホールディングスの業績が好調だったのかというと、決してそうではありません。
■TBIホールディングスの業績推移
売上高は急成長していますが、2016年3月期から恒常的な赤字に陥っています。
TBIホールディングスは駅から近い物件に規模の大きい店舗を多数出店していましたが、このタイプは家賃が高いハイリスクハイリターンのビジネス。集客に失敗すると、早々と業態転換しなければなりません。出店スピードを速めれば、それだけヒット業態を立ち上げる必要があります。裏を返すと、ヒット業態を生み出すことができなければ、赤字店舗にリニューアル費用を投じるという更なる出費を強いられるのです。
しかも、食べログやぐるなび、ホットペッパーなどグルメ媒体への集客依存度が高く、広告宣伝費が嵩(かさ)んでいました。
TBIホールディングスはコロナ禍を迎える前から苦戦していました。
ゼンショーホールディングスによる外食企業の買収が加速してきた。4月にロッテリアを子会社化したのに続き、5月にはドイツのSushi Circle Gastronomieを子会社化した。