大学発ベンチャーの「起源」(57)  京都フュージョニアリング

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京都フュージョニアリング(京都府宇治市)は、2019年10月に創業した京都大学発の新エネルギーベンチャー。「究極のエネルギー」とされる核融合発電の実現に向け、研究開発を進めている。核融合は水素をはじめとする軽い原子核同士が融合して、より重い原子核になる核反応で、現在の原子炉で使われる核分裂反応よりも大きなエネルギーを生成できる。

核融合の「周辺機器」市場を狙う

人類が初めて人為的な核融合反応に成功したのは、1952年11月に実施されたエニウェトク環礁での人類初の水素爆弾実験だ。その後、核融合反応の平和利用を目指す動きが広がる。日本では1958年に原子力委員会で核融合専門部会が設置され、核融合炉の研究が始まった。

現在も核融合反応の研究開発は国家あるいは多国間プロジェクトが中心だ。なぜ同社のような民間企業が取り組むことになったのか?

2025年に日米欧中露などによる共同プロジェクト「ITER(国際熱核融合実験炉)」の運転開始が迫っている。しかし、同プロジェクトはあまりに規模が大きく、核融合炉の設計仕様は2000年前後に決まっている。そこに入り込む余地はない。しかし、核融合炉周辺機器の開発はこれから。

そこで同社では核融合反応で生まれた中性子からエネルギーを回収する機器「ブランケット」の開発に取り組んでいる。ブランケットは核融合反応で発生した熱を回収するだけではなく、核融合反応で発生した中性子を利用して核融合炉の燃料に相当する三重水素を生成する。

三重水素の生成や核融合反応による損傷などでブランケットは劣化していくため、数年で交換しなくてはならない。つまり交換部品として継続的な需要が見込めるのだ。

「ITER」の周辺機器仕様が固まるのは、核融合反応実験が始まる2025年以降。そのため、周辺機器に参入する企業はスタートアップを含めて、まだまだ少ない。そこで同社は、いち早く開発に乗り出したのだ。先行開発に成功すれば、核融合発電の普及に伴い急成長が期待できる。

投資家からの期待も大きい。2022年2月には「シリーズB」ラウンドで、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、ジャフコグループ、大和企業投資、DBJキャピタルなどの6社から総額13億3000万円の資金調達に成功。累計調達額は16億7000万円となった。同社は調達資金で核融合炉の加熱装置や熱取出し装置、核融合プラントエンジニアリングの技術開発を加速する方針だ。

文:M&A Online編集部

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TRUST SMITHは、東京大学発の人工知能・ロボティクスベンチャー。東大で機械工学の研究をしていた大澤琢真社長が、2019年1月に設立した。数理アルゴリズムに基づく最先端のテクノロジーを駆使して、製造・物流業の課題解決に取り組んでいる。