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新型コロナ「第2波」襲来でも緊急事態宣言を再発令しない理由

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緊急事態宣言の再発令は極めて厳しい

事実、東京都は「東京アラート」を発動したものの、都民に「夜の外出は控えてほしい」と呼びかけただけで、飲食店をはじめとする事業者への営業時間短縮や再度の営業自粛要請には踏み込んでいない。

小池百合子都知事は「感染拡大の状況次第では休業を再要請する可能性もある」としているが、再要請の目安となる「新規陽性者50人」を超えても「接触歴等不明率」などその他の指標の状況もみた上で検討するという「逃げ道」を用意している。

国も自治体も休業要請の「見返り」となる休業補償問題で頭を痛めている。巨額の財源もさることながら、対象となる中小零細企業数が多く事務処理に手が回らない。さらに補償を受けた事業者からも「少なすぎる。休業による収入減に全く見合わない」との強い批判がある。

再度の休業要請となると、追加の補償を求める声が巻き起こるのは必至だ。ならば東京都のように消費者側に利用自粛を呼びかけた方が、店舗や事業者側の「自己責任」として補償問題を回避できる。

問題は休業補償だけではない。企業の人員削減により失業者が増えるなど、コロナ禍による景気低迷は社会に深刻な影響を与えている。緊急事態宣言を再度出すことで、日本経済をさらに冷え込ませることだけは何としても避けたいのが国や自治体の本音だろう。

2020年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で3.4%減だったが、同4~6月期は緊急事態宣言による外出自粛や飲食店・百貨店などの休業でさらに大きく落ち込む見通しだ。再度の緊急事態宣言発令となればマイナス成長が長期化するのは避けられない。

海外でもロシアやインドなどが、感染者や死亡者の増加が続いているにもかかわらず、6月に入ってロックダウン(都市封鎖)を緩和し始めている。これ以上の継続は、自国経済を徹底的に破壊しかねないとの懸念からだ。

日本でも安倍晋三首相が緊急事態宣言解除を発表した会見で「最悪の場合には残念ながら二度目の緊急事態宣言発出の可能性もある」としながらも、「外出自粛のような社会経済活動を制限するようなやり方はできる限り避けたい」と強調している。

国民に「油断」させないよう再度の緊急事態宣言をちらつかせながらも、二度と緊急事態宣言は出したくないのが本音だろう。

緊急事態宣言の全面解除を発表する安倍首相(5月25日、首相官邸ホームページより)

国や自治体にとって幸いなことに日本の新型コロナウイルス感染症による死亡者数は6月4日時点で903人と、米国(10万6696人)や英国(3万9728人)、イタリア(3万3601人)などに比べて圧倒的に少ないうえに、新たな検査で陽性となった感染者の多くは無症状者だ。

新型コロナウイルスが約100年前に起こった「スペイン風邪」の第二波のように強毒化して致死率が跳ね上がりでもしない限り、感染者が急増しても国や自治体は警戒を呼びかけながら「様子見」を続け、感染の自然終息を待つことになるだろう。

文:M&A Online編集部

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