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数奇な時を刻む99段の「百段階段」 ホテル雅叙園東京|産業遺産のM&A
目黒雅叙園は石川出身の大富豪・細川力蔵が東京芝浦の自宅を改築した純日本式料亭「芝浦雅叙園」に始まる。庶民や家族連れが気軽に入れる料亭として目黒に移し、来店客に目でも楽しんでもらいたいと、壁画や天井画、彫刻など館内の装飾を施し、豪華絢爛なミュージアム・ホテルとなった。
メルパルクとかんぽの宿は日本郵政株式会社法附則第2条第1項において、2012年9月末までに施設の譲渡又は廃止を義務付けられていました。ワタベウェディングがホテルメルパルクの運営受託をすることによって、婚礼という新たな収益源が加わり、物件の価値を最大化する狙いがありました。収益性が上がれば物件を譲渡する際に有利な条件で交渉できます。
2012年4月に郵政民営化法等の一部を改正する法律等が成立。「かんぽの宿及びメルパルクについては、その事業の継続、譲渡又は廃止が日本郵政株式会社の経営判断に委ねられることを踏まえ、会社の経営に及ぼす影響を勘案しつつ、適切に対処されるよう努めること。(一部省略)」と定められました。
ホテルメルパルクの物件を所有し、かんぽの宿の運営をする日本郵政不動産は、全くといっていいほど利益が出ていません。
■日本郵政不動産の業績推移(単位:百万円)
2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | |
売上高 | 2,080 | 3,655 | 3,406 |
営業利益 | -625 | -184 | -1,244 |
※決算公告より筆者作成
赤字は主にかんぽの宿によるものです。
2021年に入ってついにかんぽの宿の大量譲渡に動きます。不動産投資ファンド・フォートレスやシャトレーゼホールディングス(山梨県甲府市)などに、保有する33施設のうち29施設を売却すると2021年10月に発表しました。
日本郵政がコロナ禍の今、ワタベウェディングが見限ったホテルメルパルクの運営受託者を見つけるのは極めて難しいと考えられます。物件の売却へと動く可能性が高いです。
やや古い情報ですが、2009年3月末時点でのメルパルク11施設の簿価は346億4,300万円(うち土地212億6,500万円、建物103億2,300万円)となっています。最も価値の高いメルパルク東京が81億6,000万円です。
■メルパルクの概要
鉄道会社を中心に所有するホテルを不動産ファンドなどへと売却する動きが加速しています。このタイミングであれば安値での売却になるものと予想できますが、コロナの影響が長期化する中で早期の売却を進めたいと考えているはずです。メルパルクの行方に注目が集まります。
麦とホップ@ビールを飲む理由
目黒雅叙園は石川出身の大富豪・細川力蔵が東京芝浦の自宅を改築した純日本式料亭「芝浦雅叙園」に始まる。庶民や家族連れが気軽に入れる料亭として目黒に移し、来店客に目でも楽しんでもらいたいと、壁画や天井画、彫刻など館内の装飾を施し、豪華絢爛なミュージアム・ホテルとなった。