トップ > 調べる・学ぶ > M&A実務 > M&A法務 >公開買付開示ガイドライン(案)の公表

公開買付開示ガイドライン(案)の公表

alt
金融庁

2024年6月28日、金融庁は、「公開買付けの開示に関する留意事項について(公開買付開示ガイドライン)(案)」(「本ガイドライン案」)を公表しました。

本ガイドライン案は、発行者以外の者による株券等の公開買付けに係る開示書類について、関東財務局の審査における留意事項や開示事項等についての考え方を示すことを目的としたものです。

本ガイドライン案では、公開買付届出書における「買付け等の目的」の箇所を中心に記載上の留意事項が示されており、例えば、以下の項目について明らかにされています。

項目 概要
(事前相談) ・ 意見表明報告書については、関東財務局の審査等の対象であるが、対象者の「公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由」等の意見表明報告書に記載されるべき重要な事項が当該公開買付けに係る公開買付届出書に記載される場合には、重複を回避する観点から、原則として意見表明報告書の記載内容の事前の相談には応じない。
公開買付けの概要 ・ 全部取得を目的とする公開買付けにおいて、公開買付けの後において公開買付者及びその特別関係者が有する議決権が総株主の議決権の3分の2を下回るおそれがある買付予定数の下限を設定する場合には、公開買付者において当該買付予定数の下限が買付け等の目的の達成のために必要かつ適当と考えた理由について、具体的に記載されているか審査する。
公開買付者が公開買付けを実施するに至った背景、目的及び意思決定の過程 ・ 全部取得を目的とする公開買付けにおいて、公開買付者の概要に関する情報については、原則として、投資者の投資判断に重大な誤解を生じさせるような記載がないかという観点からの審査で足りる。
・ 部分取得を目的とする公開買付けの場合には、当該公開買付けの成立後も公開買付者以外の投資者が対象者の株主等として残存する余地があることを踏まえ、公開買付者の概要に関する情報が、公開買付者の実態が明らかになるように記載されているか審査する。但し、公開買付者が継続開示会社である場合には、当該公開買付者に係る直近の有価証券報告書等の継続開示書類に記載された事実の程度で記載されているかの審査で足りる。
対象者における公開買付けに対する意思決定の過程並びにその内容及び理由 ・ 全部取得を目的とする公開買付けの公開買付価格が対象者の直近の 1 株当たり純資産額を下回る水準となる場合において、対象者が当該公開買付価格に公正性・合理性があると認めたときには、その判断根拠(当該公開買付価格と当該 1 株当たり純資産額の差額に対する評価も含む。)が対象者の個別具体的な事業内容、財務状況等を踏まえて、適切かつ具体的に記載されているか審査する。
・ 公開買付価格のプレミアム率が過去の同種案件のプレミアム率のうちの全部又は一部を下回るにもかかわらず、対象者において当該公開買付価格に公正性・合理性があると認めた場合には、当該判断に至った理由(過去の同種案件のプレミアム率を下回ることへの評価を含む。)が具体的に記載されているか審査する。
公開買付けの公正性を担保するための措置 ・ 公開買付者、その特別関係者、対象者又は特別委員会が、株式価値算定書等を取得した旨が記載される場合には、公正性担保措置としての記載内容の不備等を審査するため、株式価値算定書等を含む関連資料の確認を要する場合がある。
・ マジョリティ・オブ・マイノリティ条件が設定される場合において、公開買付者との間で応募契約を締結する株主が、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の算出に際して公開買付者と重要な利害関係を有する株主とされていない場合には、応募契約の締結の経緯等、個別の事情を踏まえ、応募株主と公開買付者との間の重要な利害関係の有無が考慮されているか審査する。
公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項) ・ スクイーズアウト手続の実施について一定の条件を設定する場合には、当該条件の内容が一義的に明らかとなるように記載されているか審査する(例えば、公開買付け後の株券等所有割合が 3 分の 2 以上となる場合には実施するが、それ未満の場合には実施しない等)。
公開買付けに係る重要な合意 ・ 公開買付けに係る重要な合意として記載された内容が、合意の実態に即した具体的な記載となっているか審査する。かかる審査に当たっては、必要に応じて契約書等の資料の提出を求めた上で、各当事者の権利・義務の内容、表明保証、クロージング前後の義務、前提条件、補償・損害賠償(金額を含む。)、有効期間、解除・終了に関する条項等、個別の事情に応じ、投資判断上重要な情報が記載されているか審査する。

また、本ガイドライン案は、公開買付けの予告を行う際の開示の在り方にも言及しています。具体的には、予告の必要性、公開買付けを開始するための条件及び開始予定時期に関し指針が示されています。

本ガイドライン案は、現在パブリックコメント期間中であるため、パブリックコメントの結果を踏まえ内容が変更される可能性があります。また、本ガイドライン案は、現行の公開買付制度を前提として策定したもので、今後、関連する政令・内閣府令の改正が行われる際には、併せて本ガイドラインの見直しも検討されるとのことです。公開買付制度については、2024年5月、金融商品取引法の改正案が国会で成立しており(当該改正の概要については、当事務所 Client Alert 2024 年4月号(Vol.124)「公開買付制度・大量保有報告制度に関する金融商品取引法改正案の概要」及び Client Alert 2024 年6 月号(Vol.126)「令和6年金商法改正による大量保有報告制度・公開買付制度の整備」をご参照ください。)、同改正に伴い、本ガイドラインの見直しが行われる可能性があります。そのため、今後の本ガイドライン案の動向に引き続き注視が必要です。

パートナー大石 篤史
パートナー 鈴木 克昌
シニア・アソシエイト 森田 理早
アソシエイト 橘川 文哉
アソシエイト 藤井 啓樹

森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2024年7月号(第127号)より転載

NEXT STORY