実務は現地に任せるべき

-人のマネジメントも日本とは違うのでしょうか

 はい。日系企業だと従業員の質は平均して高いのですが、ASEAN企業では経営トップと従業員の質の格差が想像以上に大きい。ビジネスを進めるうえで現地政財官界との人的ネットワークが重要な国もあり、それを一手に担う現地経営層が離職した場合のダメージは極めて深刻です。こうした現地キーマンのリテンション(優秀な人材を自社に確保しておくための施策)は、中小企業のM&Aにおいては非常に重要です。 アジアの買い手の実に9割以上がM&Aでリテンションボーナスを活用しています。(参考:マーサー「M&Aにおける人材流出リスク:人材リテンションの理論と実践」 レポートを発表

-M&A後の採用はどうでしょう

 ASEANの労働市場は流動性が高いので、人材のBuyとBuildの戦略をうまく使い分ける必要があります。Buyは文字通り人材を「買う」、つまりスカウトすることです。一方のBuildは人材を「養成」すること。多くの日系企業ではBuild戦略は得意ですが、Buy戦略は苦手です。Buy戦略の要は「ちゃんとした報酬を払う」です。他の従業員との給与格差を気にして報酬を低く抑えていると、優秀な人材が採れないばかりか社内から流出してしまいます。

-実務は現地の人に任せた方がよいのでしょうか

 その通りだと思います。ダイキン<6367>をはじめ日系企業でも現地人材をトップにすえるケースが増えてきました。日本人駐在員が現地法人のマネジメント層を独占する状態では、将来の幹部候補となる優秀な人材が定着しませんし、何より採用できなくなります。日本の本社が現地での実務について、あれこれ細かく口出しするのもよくない。優秀な人材ほど、嫌気がさして辞めていきます。ガバナンスなどの管理部門は日本側がきちんと把握し、カネを稼ぐ実務部門は現地に権限を移譲すべきです。