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「スピンオフを実施しやすくする税制改正とは?」しっかり学ぶM&A 基礎講座(20)

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スピンオフには組織再編税制が適用される

スピンオフの中でも「分割型分割」に該当するもの、子会社株式の全部を現物配当する法人税法上の「株式分配」に該当するもので、さらに適格要件を満たす場合には上述のような譲渡損益や配当に対する課税が繰り延べられます。

このような措置は平成29年度税制改正でスピンオフが「組織再編税制」の一部に組み込まれたことによるものです。組織再編税制というのは、組織再編により資産などを移転する際、その前後で経済実態に実質的な変化がないと認められる場合には、課税を繰り延べる制度です。

スピンオフに関わる平成29年度税制改正の概要】

(出所:平成30年4月経済産業省「「スピンオフ」の活用に関する手引」)

組織再編税制の適格要件とは

組織再編税制の典型例は完全親子会社間における合併株式交換株式移転会社分割などの組織再編です。法形式上は変化があっても、たとえば100%支配関係があるグループ内での再編であれば、経済実態には変化がないため課税が繰り延べられるのです。

この組織再編税制が適用されるためには、いくつかの適格要件を満たしている必要があります。例えば「分割型分割」や「株式分配」に該当するスピンオフの場合、株式のみが持株数に応じて交付されること(株式のみ按分交付要件)、従業員の80%以上が引き継がれること(従業員引継要件)、事業が継続して行われることが見込まれること(事業継続要件)などの要件の充足が求められます。

スピンオフを活用する環境整備

適格要件などを十分に検討する必要はありますが、グループ再編の手法としてスピンオフを活用する土壌は整いつつあるといえます。また、平成30年度税制改正においても、競争力強化のための税制措置の一環として、完全支配関係の継続要件や事業継続要件などをより柔軟に判定できるように見直されました。スピンオフを活用したグローバルな再編や子会社上場事例なども今後増えてくるかもしれません。

文:北川ワタル

北川 ワタル

経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。

学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)

出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など

北川ワタル事務所・株式会社ダーチャコンセプトのウェブサイトはこちら


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2018/06/11

戦略にもとづく機動的な組織再編を実現する手段として、特定の事業や子会社を切り出すスピンオフの活用が考えられます。2006年の会社法施行およびその後の改正により組織再編の柔軟性は飛躍的に向上しました。今回はその中でも税制改正などで注目度の高いスピンオフの手法に焦点をあてて、その効果や活用例を確認してみたいと思います。