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米国の「新型インフレ」は利上げで解決するほど単純ではないかも

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政策金利の引き上げを決めた米FRBのパウエル議長(Photo By Reuters)

「持続可能性」重視でサービス提供が逼迫

米主要港のロサンゼルス・ロングビーチ港では、通常時は0〜1隻の入港待ちコンテナ船舶数が、2022年に入って80隻前後と急増。2014年から2015年の労働争議で生じた港湾物流危機を上回る混乱ぶりだ。さらに物流混乱に伴う保管期間の長期化で倉庫が逼迫するなど、供給側の問題は解決しそうにない。

企業の動きも変わっている。かつては多くの企業が「商機を逃すな!」とばかりに積極投資で供給増に走った。しかし、今日では「売上増」よりも「持続可能性」を重視するようになっている。つまり目先の需要増に踊らされることなく、持続可能な範囲内で事業を展開するという考え方だ。

全米で不足している倉庫の場合、一時的に不足したとしても増設はしない。スペースが足りなくなれば料金を引き上げることで荷物の引受量を減らし、それでも足りないなら受け入れを断わるということだ。倉庫業者にとっては新規投資というリスクをとる必要がなく、売上高が上がるのだから「持続可能性」は向上する。

米国では倉庫不足にもかかわらず、新設の動きは鈍い(写真はイメージ)

実際、倉庫業者から「これまでの3倍の保管料を支払え。さもなくば荷物を引き上げろ」と求められて途方に暮れている中小企業も出ている。普通なら競合企業が新たな倉庫を増設して顧客を横取りするのだが、労働者を集められない状況下で建物を新設しても稼働できない。なにより同業他社が同じ「持続可能性」重視の行動をとっているのだから「横取り」の懸念はなく、いわば「不作為のカルテル」状態になっている。

FRBによる利上げは企業の求人意欲を下げ、賃金を引き下げる効果があると期待されている。しかし、流通を含むサービス業で積極的な事業拡大の動きがない限り、米国の物価高は止まらない。皮肉にも利上げは事業拡大に必須となる新規投資のブレーキとなる。今回の米国のインフレは、舵取りが極めて難しそうだ。

文:M&A Online編集部

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