政府が主張する「投機筋の動き」を抑えれば円安は解消するのか?

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円安は「投機筋の動き」が原因なのか?(写真はイメージ)

経済の途上国化で円安になっても貿易黒字は増えない

ところが日本は劇的な円安になっているにもかかわらず、輸入額が急増。2022年8月の貿易統計速報によると2兆8173億円の赤字と、統計の比較ができる1979年以降では単月で最悪となった。円安により輸出額は前年同月比22.1%増の8兆619億円と好調だったが、輸入額がエネルギーなど資源価格の高騰で同49.9%増の10兆8792億円にまで増加したためだ。

実はこうした現象は珍しくない。途上国では、よくある状況だ。要は「外国から買わなければならないモノは多いが、外国へ売るモノが少ない」状況だ。日本ではさすがにそこまでではないが、「外国から買っているモノの金額よりも、外国で売っているモノの金額が少ない」状況と言える。

すでに2005年から経常収支のうち、海外投資から得られる利子や配当などの所得収支がモノやサービスの貿易収支を上回っており、日本はかつての貿易立国から投資立国に様変わりしたのだ。とはいえ、貿易収支が黒字にならないと、海外投資に回す資金が先細る。

こうした状況から日本経済が長期的に「途上国化」していく可能性があり、購買力平価との乖離は円の先行き不安を反映したものとも言えそうだ。現在の円安は「投機的な動き」よりも、短期的には日米の金利差、長期的には日本経済の低迷を織り込んだ動きと考えた方が良さそうだ。

そうなると政府・日銀が「円買いドル売り」の為替介入を続けたところで、短期的には日本の政策金利引き上げ、長期的には貿易収支の改善がなければ円安の流れは変わらないだろう。

文:M&A Online編集部

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