政府が主張する「投機筋の動き」を抑えれば円安は解消するのか?

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円安は「投機筋の動き」が原因なのか?(写真はイメージ)

政府・日銀による「円買いドル売り」の為替介入から1週間を迎えようとしている。すでに1ドル=144円台後半にまで戻り、介入効果は消滅した格好だ。鈴木俊一財務相は為替介入に踏み切った理由を「投機による過度な変動を見過ごすことはできない」と説明した。とはいえ現実には日米の政策金利差が大きく開いており、投機筋の円売りが問題というのには無理がある。では、なぜ円安の原因を「投機」と主張するのか?

購買力平価では45円もの円安

その根拠となるのが購買力平価だ。これは、ある国の通貨での購買力が他国でも等しい水準となるよう為替レートが決まるという考え方。同じ商品やサービスを価格をそれぞれの通貨で比較して、適正な為替レートを算定する。例えば「A」という商品が日本で1万円、米国で100ドルで売られているとしたら、1ドル=100円が適正な為替レートになる。

経済協力開発機構(OECD)によると2021年の購買力平価は1ドル=100.4円であり、同年の平均為替レートの109.8円に比べても9円以上(8.5%)の円安水準だった。これが145円を超えるとなると、45円(30.7%)もの円安となる。さすがにここまで購買力平価と乖離(かいり)すれば「投機筋の動き」ではないか…というわけだ。

しかし、購買力平価の考え方には前提がある。財やサービスを自由に取引できる市場で、通貨安になれば輸出額が増え、通貨高になれば反対に輸入額が増える状況でなければ成り立たない。

かつて先進国で「通貨安競争」が起こっていたのは、自国の通貨を安くすることで輸入品を減らして自国産業を保護するためだった。経済学のセオリーでは、通貨安で輸出が増えると貿易黒字となり通貨高に振れる。

M&A Online編集部

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