一方、同資料が発表される2カ月前、2017年2月にみずほフィナンシャルグループ<8411>がまとめた「2020年東京オリンピック・パラリンピックの経済効果」によると、東京五輪の経済効果は全国で約30兆円。オリ・パラ準備局の推定に比べるとほぼ同水準といえる。
このうち投資済みの施設整備費(7000億円)と都市インフラ整備(21兆6987億円)を除く7兆6013億円が経済損失となる。オリ・パラ準備局と大きく異なるのは都市インフラ整備の額。これは、みずほが観光関連施設など民間によるハード面の設備投資を経済効果に加えているからだ。
経済損失の試算比較 | (単位:億円) | |
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東京オリ・パラ準備局 | みずほフィナンシャル | |
経済効果 | 323,179 | 300,000 |
施設整備費 | 3,500 | 7,000 |
都市インフラ整備 | 22,572 | 216,987 |
経済損失 | -297,107 | -76,013 |
(経済損失は経済効果から投資済みの施設整備費、都市インフラ整備を差し引いた数字)
一方、同準備局は「スポーツ、都民参加・ボランティア、文化、教育・多様性」(8159億円)や「経済の活性化・最先端技術の活用」(9兆1666億円)といったソフト面での経済効果を多く見積もっている。
そのため経済損失額が、すでに完成しているハード面を重視するみずほの試算では少なく、五輪開催で実現するソフト面を重視するオリ・パラ準備局では多くなるのだ。
オリ・パラ準備局は「コンパクトな五輪」と招致した手前、施設整備費を3500億円(みずほの試算では7000億円)と試算するなどハード面の経済効果を低く見積もったため、想定される経済損失が膨らんだ格好だ。
いずれも3年前の試算であり、現実的な数字というよりも一つの「目安」と考えておくべきだ。が、オリ・パラ準備局よりも、みずほの試算の方が現実に近いとされ、経済損失額は7兆6013億円程度と見るのが妥当だろう。
だが、日本経済の先行きに新たな懸念が出てきた。いきなり吹きだした「解散風」だ。与党内に「東京五輪の中止が決まる前に解散、総選挙に打って出るほうが得策」との見方が広がっているためという。
コロナ禍で経済混乱が長期化する中、衆院解散・総選挙で国会の機能が停止すれば、経済対策がさらに後手に回る可能性が高い。
文:M&A Online編集部