ジンギスカンを飲み込んだ「カレーハウスCoCo壱番屋」その心は

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ラム肉(写真はイメージです)

カレー専門店の「カレーハウスCoCo壱番屋」を中心に、あんかけスパゲティの「パスタ・デ・ココ」、カレーラーメンの「麵屋ここいち」、鉄板ハンバーグの「にっくい亭」などを国内外で1480店(2020年11月末時点)展開する壱番屋<7630>が、ジンギスカン料理店のチェーン展開に乗り出す。

同社は2020年12月29日に、北海道旭川市でジンギスカン料理店「成吉思汗(ジンギスカン)大黒屋」(1店舗)を経営する大黒商事(北海道旭川市)の全株式を取得し子会社化した。今後カレーハウスなどで培ったチェーン展開ノウハウを活用して、成吉思汗大黒屋の多店舗化を進める。

壱番屋は新たな業態の開発と育成によるグループ力の強化と企業価値の向上を経営課題の一つに掲げており、今回の大黒商事の子会社化はこの取り組みの一環。でも、なぜジンギスカンだったのか。

託された夢とは

大黒商事が運営する成吉思汗大黒屋は北海道を訪れる観光客をはじめ、多くの地元住民が利用する繁盛店で、創業者の織田賢児氏は、成吉思汗大黒屋の多店舗展開の夢を持っていたという。

ところが成吉思汗大黒屋を創業し20年近くにが経ち、織田氏が高齢になったことから自身の多店舗化の夢を壱番屋に託した。一方の壱番屋は大黒屋の商品力や成長性は極めて高いと判断し、新業態の開発、育成という経営方針に沿っていることから大黒商事の子会社に踏み切ったというのが、今回のM&Aの経緯だ。  

【壱番屋の沿革】

1978 名古屋市に「カレーハウスCoCo壱番屋」をオープン
1994 全国47都道府県下に出店
2000 株式を店頭公開
2003 新業態店舗あんかけスパゲッティ専門店「パスタ・デ・ココ」をオープン
2003 新業態店舗カレーうどん専門店「麺屋黄粉壱」(めんやここいち)をオープン
2004 東京証券取引所第2部、名古屋証券取引所第2部に上場
2005 東京証券取引所第1部、名古屋証券取引所第1部に上場
2010 新業態ハンバーグ専門店「にっくい亭」をオープン
2011 新業態ひつまぶし専門店「うなぎ屋壱番」をオープン
2015 ハウス食品グループ本社による公開買付けで同社の子会社となる
2020 エージーピーから植物工場を譲受

コロナ後を睨んだ戦略か

壱番屋は子会社化した大黒商事の業績を公表していないが、民間の調査会社によると、大黒商事の売上高は2017年12月期が3億3000万円、2018年12月期が3億2000万円、2019年12月期が3億円と2期連続の減収となっている。

2020年12月期の業績は明らかになっていないが、新型コロナウイルスの影響で観光客が激減していることもあり、減収傾向が続いていることが予想される。

壱番屋の方はコロナ禍にあった2021年2月期は売上高が前年度比13.2%減の447億円、営業利益が同50.4%減の25億8000万円、経常利益が同44.5%減の30億1000億円、当期利益が同46.0%減の17億6000万円と減収減益の見通し。

ただ臨時休業や営業時間の短縮などを余儀なくされ赤字に転落する外食企業が少なくない中、営業利益率が5.8%に達する同社の業績は決して悪くはない。

【壱番屋の業績推移】単位:億円、2021年2月期は予想

  2019年2月期 2020年2月期 2021年2月期
売上高 502.14 514.95 447
営業利益 44.42 52.04 25.8
経常利益 46.59 54.24 30.1
当期利益 27.89 32.57 17.6

さらに、四半期ごとの国内既存店(直営店とフランチャイズ店)の売上高推移を見ると2021年2月期の第1四半期(2020年3-5月)が前年同期比18.5%減、第2四半期(同6-8月)が同11.3%減、第3四半期(同9-11月)が同8.3%減と回復傾向を示している。

こうした背景もあり、壱番屋は生鮮野菜の安定調達を目的に2020年10月に、エージーピー<9377>から千葉県にある植物工場などからなる工場野菜生産・販売事業を取得するなど積極策を打ち出していた。

今年2件目のM&Aとなる大黒商事の子会社化は託された夢の実現はもとより、コロナ後を睨んだ戦略ともいえそうだ。

文:M&A Online編集部

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