JR貨物は買いか? 社会資本としての鉄道貨物|人とものを「運ぶM&A」

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独特の風貌で疾走する貨物列車「EF210形式(愛称:ECO-POWER桃太郎)」

進むか? モーダルコンビネーション

いかにも買うには勇気の必要そうなJR貨物だが、実は着々と次代へ向けての投資を進めている。ブロックトレイン(貨物列車の編成の一部を貸し切って定期運行する)への取り組みはそのひとつだ。

2006年から運行しているトヨタ自動車の製品を運ぶTOYOTA LONGPASS EXPRESS(トヨタ・ロングパス・エクスプレス)はよく知られているが、こちらは専用であるのに対し、大手物流会社による混載も進めている。

福山レールエクスプレス号は、2017年3月から福山通運が名古屋貨物ターミナル駅~北九州貨物ターミナル駅・福岡貨物ターミナル駅で開始。2021年3月からは安治川口駅~盛岡貨物ターミナル駅でも開始した。

活躍する福山レールエクスプレス号

西濃運輸はカンガルーライナーSS60(吹田貨物ターミナル~郡山貨物ターミナル駅~仙台港駅)に加えて2021年3月から、カンガルーライナーNF64(名古屋貨物ターミナル駅~福岡貨物ターミナル駅間)もスタート。福山通運、西濃運輸ともドライバーの長時間労働の削減、ドライバー不足への対応、環境対策などからモーダルシフトを進めている。

JR貨物は、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)の一環として、「モーダルコンビネーション」を提案。「JR貨物グループ中期経営計画2023」(2021年1月策定)では、総合物流事業を目指した取り組みを打ち出している。

モーダルコンビネーションとは、より円滑なサプライチェーンが実現できるように、トラック、鉄道、航空、船舶といった輸送手段をよりスムーズにつないでいくこと。環境に優しいだけではなく便利でなければならないとの考えから、現在ある鉄道貨物インフラを中心に据え、よりスムーズに低コストでつなぐためにIT技術を活用していく。

貨物駅の結節点としての機能強化策では、レールゲート、積替ステーションの設置も進めている。レールゲートは、マルチテナント型物流施設で、集荷・配達・保管・荷役・梱包・流通加工の拠点として提供するもの。将来、仙台・名古屋・大阪・福岡にも設置される計画だ。積替ステーションは、従来のようなコンテナ輸送に加えて、トラック便で届いた荷物をコンテナへ積み替える設備。そもそもコンテナは物流合理化によって推進されてきた輸送方法ではあるものの、小口化、少量化に対応するためには積替も不可欠なサービスとなりつつある。

東京レールゲートWEST(2020年3月)、新座貨物ターミナル駅構内「積替ステーション」(2020年7月)は完成し、以後、DPL札幌レールゲート(2022年5月竣工予定)、東京レールゲートEAST(2022年8月竣工予定)と続く。

いわゆる「スマート貨物ターミナル」として、省力化、効率化を図りながらも安全でスピーディーな輸送を可能にすることが目標となっている。この点を見れば「買い」かと思えてくる。

ドライバーの待ち時間にはアプリで対応

こうした施策で問題になるのが、トラックドライバーの待ち時間である。鉄道貨物は出発時刻から遡って搬入期限があり、到着後もそこからスタートしてトラックへ積み込むタイミングが決まる。そこで待ち時間が多く発生すると、エンドユーザーへの到着時間に大きく影響する。ドライバーの負担、賃金問題も生じる。

いまの時代、結節点でのムダを減らすことは重要な課題で、その点ではDX(デジタルトランスフォーメーション)への期待もある。

JR貨物では2021年度下期から「トラックドライバー用アプリ(仮称)」を6駅で実験的に導入する。コンテナ持込・持出時間予約、列車運行情報などを統合したアプリとなる予定だ。

果たして、JR貨物をみなさんが買うとしたらいくら出すだろうか。もしくはどのような企業と組み合わせれば、より高い価値創造につながるだろうか。そして、それは社会的資本に資するだろうか。M&A視点から一度、日本の経済に大きく影響を与える可能性を持つ存在を見直してみる必要もあるはずだ。(おわり)

文:舛本 哲郎(ライター)

舛本 哲郎 (ますもと・てつろう)

1957 年横浜生まれ。日本大学経済学部卒。物流・流通専門誌、ビジネス誌「ウェッジ」、金融専門誌などの編集・記者、経営専門誌の編集長を経て、2017年より、総合情報サイト「かきっと!」編集長、直販サイト・イリヤEブックス主宰。愛玩動物飼養管理士(ペットケア・アドバイザー)。


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