話は江戸後期・明治維新期にさかのぼる。1868年、神戸港が開港した。背後には六甲山系がそびえ、山並みがなだれ落ちるように迫る港町。それだけに海は深く、大きな河川もないため砂が運ばれることも少ない。六甲おろしと呼ばれる吹き下ろす山風は強いものの、基本的には東西に伸びる山々が季節風を抑えてくれる。まさに神戸港には天然の良港の条件が整っていた。
だが、港に欠かせない飲み水となると、大きな河川はないだけに乏しい限り。港の周辺は外国人の居留地が広がっている。多くの外国船が寄港し、その際には飲み水をくんでいくが、神戸港は飲み水に乏しい点では見劣りする港でもあった...