岩手県・南部富士と呼ばれる秀麗な岩手山の南麓に広がる小岩井農場。その開設は1800年代後半にさかのぼる。
当時、鉄道局(のちの鉄道庁)長官を務め、日本の“鉄道の父”と称された井上勝が東北本線の延伸を計画していた折、岩手・小岩井の地を訪れ、「この荒れ果てた火山灰の大地に、大規模な農場を開きたい」という大きな夢を抱いた。その夢の背景には井上が、鉄道敷設事業によって全国各地で美しい田園風景をつぶしてきた“悔恨の思い”があったという。
井上は三菱財閥の岩崎彌太郎を補佐し、三菱の顧問だった小野義眞にその思いを伝え、協力を求めた...