よみがえる商家・旧小西家住宅、戦後「ボンドのコニシ」として名をはせる|産業遺産のM&A

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大阪・道修町通りに面して佇む旧小西家住宅…高層ビルに囲まれた“時代のオアシス”のよう

大阪・船場の東端、南北に堺筋が通り、東西に製薬会社が立ち並ぶ道修町通りの交差点に、ぽっかりと時代に取り残されたように豪奢な佇まいを見せる商家がある。ボンドで有名なコニシ<4956>、旧小西家の住宅である。

周辺はビジネス街で、高層ビルが立ち並ぶ。100年以上にわたり、道修町で受け継がれてきた大阪を代表する表屋造りの名建築。2001年には、国の重要文化財に指定された。

薬種商として、アルコール販売で事業を拡大

かつてこの小西家住宅は、現在のコニシの旧社屋だった。1994年までは本社として使われていたという。遠目に見ると、まるで、大阪の街は旧小西家という個人宅が建立されたあとに生まれたかのような風格ある家構え。現在のコニシ本社屋は旧小西家住宅の向かい、道修町通りを挟んだ南側に、ガラス張りの高層ビルとして建っている。

この旧小西家住宅が、コニシの歴史のみならず、薬のまち・道修町に残る医薬に関わる品々を収蔵し、史料館として2020年11月、創業150年を機にリニューアルした。

コニシの創業は明治維新期の1870(明治3)年。 小西屋という薬種商だった。その後、明治期に活躍する他の企業と同様に、海外製品を積極的に取り扱うようになる。薬種だけでなく、アルコールや洋酒の製造・販売、工業・化学製品などを扱うように業容を拡大した。特に大正後期から昭和初期にかけてはエチルアルコールや輸入アルコール飲料の国内シェア40%をカバーするほどに成長、「アルコールの小西」として名が高まる。

戦後に「ボンドのコニシ」で名をはせる

コニシは創業の頃から時代の機運をとらえて商社として活躍し、薬からアルコール、洋酒、工業・化学製品、食料品の取り扱いまで商社として事業の幅を広げた。

堺筋からの旧小西家住宅。写真右に道修町通りを挟んでコニシ大阪本社が建つ

合成接着剤「ボンド」を発売したのは戦後のことだ。以後は、中国や東南アジアに現地法人を設立するとともに、グループ内のM&Aも積極的に進めた。現在は、ボンド事業部、化成品事業部、土木建築事業部の3本の柱を持っている。

まさに、「だけじゃない」のはテイジンだけじゃないようで、「だけじゃない。コニシ」「ボンド木工用だけ有名で、困ってます。」というキャッチフレーズで特設ページを開設するまでになっている(http://www.bond.co.jp/koko/)。

だが、コニシは事業拡大、事業承継、上場、組織再編、M&Aにかかわらず、旧小西家住宅を旧社屋として頑なと思えるほどに守り立て続けた。第二次大戦の戦禍をしのいだという幸運もあっただろうが、そこには大阪・船場の伝統やプライドと底力を感じる。

「史料館」としてリニューアルオープン

史料館としてリニューアルオープンしたことでもあり、新型コロナ禍で予約制だが訪ねてみて、伝統ある商家の暮らしの一端に触れてみるのもいいだろう。

道修町通りも歩いてみたい。旧小西家住宅がある道修町通りは、薬のまち。日本を代表するタケダ(武田薬品工業)、シオノギ(塩野義製薬)、タナベ(田辺製薬・現田辺三菱製薬)が軒を連ね、道修町御三家と呼ばれている。

道修町御三家も、それぞれに企業ミュージアムを持ち、道修町ミュージアムストリートとして薬の歴史を今に伝える。きっと道修町御三家も、他の道修町通りの関連業者も、「ご近所の小西さん家が立派にリニューアルしはったで!」と喜んでいるだろう。

文:M&A Online編集部

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