M&Aによる事業承継にはどのようなメリットがあるのか

alt
写真はイメージです

M&Aは戦前から行われ、その目的や内容も時代とともに変化してきました。バブル期には大企業中心の国境を超えた(クロスボーダー)M&A、2000年代初頭のファンドによるもの、そして最近は、中小企業の事業承継の一環としても行われています。

ここでは、なぜ中小企業が事業承継の手段としてM&Aを選択するようになったのか、そのメリットは何かなど、ポストコロナにおけるM&Aも見据えながら検証していきましょう。

事業承継に中小企業経営者がM&Aを選ぶ理由

M&Aは大企業を中心に行われ、現在も経営戦略の一環として盛んに行われています。その一方で、中小企業でもM&Aを積極的に行うようになっており、数の上では大企業を上回っています。

中小企業によるM&Aの増加要因は大企業とは異なり、中小企業が抱える構造的な問題にあります。

構造的な問題としては、まず経営者自身の高齢化があげられます。そしてもうひとつは、後継者となる人材が不足していること。

我が国の少子高齢化という構造的な問題が、そのまま中小企業の事業承継に反映されているのです。

中小企業経営者のかつての事業承継法は、自分の子や孫、あるいは配偶者に引き継がせるか、最悪の場合廃業するといったものでした。

しかし、現在では経営者の意識も変化しており、無理をしてまで親族に引き継がせることをよしとしなかったり、廃業による社会的・経済的損失に対する意識も高まってきています。
その上でM&Aに対する経営者の見方の変化があります。

このようなことから、中小企業の経営者は、事業承継の手法としてM&Aを選択するようになってきたのです。

M&Aによる事業承継の主なメリット

中小企業経営者が、M&Aを事業承継法として選ぶ理由には、そのメリットによるところもあります。

事業承継が短期間でできる

親族に事業を承継させる場合、会社経営の基本から教え込まなければなりません。そのため一人前の経営者として会社を任せられるようなるには、相当な期間が必要になります。

従業員への承継の場合、役員から後継人材を探すためにもある程度時間が必要です。役員以外の一般従業員からの選定となると、経営者として育成するために、さらに多くの時間が必要になります。

これらに対してM&Aの場合、条件次第ですが早ければ数か月で事業承継が可能になります。

金銭面でメリットがある

親族に承継させる時には、会社は残っても経営者にキャッシュフローは入りません。さらに、後継者には相続税や贈与税などの税負担が生じます。

従業員への承継にしても、資金面で従業員にあまり高額な負担を負わせるのも気がひけるでしょう。

その点M&Aの場合、経営者が手にするキャッシュが大きいというメリットがあります。

M&Aでは、総資産に「のれん」というプレミアムが加算された額をキャッシュで手に入れることができます。これにより経営者は引退しても、経済的に余裕を持った生活が送れるでしょう。

経営者個人の保証が取れ身軽になれる

中小企業経営者の場合は、銀行などの民間金融機関からの、いわゆる「プロパー融資」を受けているだけでなく、信用保証協会の「保証付の融資」を受けていることがあります。これらの場合、必ずといっていいほど経営者個人の保証が求められます。

また、一般的に経営者個人が所有する自宅やその他の不動産がある場合には抵当権、その他の担保権が設定されます。

株式譲渡によるM&Aなどでは、こうした負債や負担もすべて引き継ぐので、経営者個人の保証や担保権などから解放され身軽になれるのです。

近年、事業承継の方法が、親族承継や従業員承継からM&Aに軸足が移っています。それは後継者難と経営者のM&Aに対する意識の変化、そしてM&Aによる事業承継のメリットが広く知られるようになってきたからと思われます。

アフターコロナに備え、攻めの戦略でM&Aを推進する企業も少なくありません。確かに中小企業を取り巻く経営環境は非常に厳しいものがありますが、危機をチャンスと捉え、中小企業経営者は、国の支援、その他多くのメリットが得られるうちに、M&Aによる事業承継を考えておくことも必要ではないでしょうか。

文:特定行政書士 萩原 洋

M&A Online編集部

M&Aをもっと身近に。

これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。


NEXT STORY

事業承継、廃業・清算と存続を図るM&A

事業承継、廃業・清算と存続を図るM&A

2021/08/12

我が国の企業のほとんどが中小企業で、一般的に会社の所有者が経営にあたっています。近年、経営者にとって頭を悩ましているのが、会社の今後をどうするかという事業承継問題です。