自社株と自己株式は同じ?

経済や法律に関するニュース、記事にはいろいろな専門用語が登場します。M&A関連でも似たような言葉が出てきて、混乱してしまう方もいらっしゃるでしょう。

今回は紛らわしいM&Aの専門用語から「自社株」と「自己株式」の違いを説明します。知っていると経済ニュースや解説記事などがわかりやすくなり、投資やM&Aの実行時においても的確な判断をできるようになります。ぜひ押さえておきましょう。

禁止されていた自社株買い

自社株買いの実施(自己株式の取得)は、株価の上昇が期待されるため、投資家から注目を集める話題のひとつです。

かつて我が国では、自社株保有(会社が自社の株式を所有すること)は商法違反でした。しかし、株式を買い占めて会社に高値で引き取らせる「グリーンメーラー」という存在が跋扈し、株式の買い占めに頭を悩ませる大企業は少なくありませんでした。有名なところでは1989年に乗っ取り屋として知られる米国投資家のブーン・ピケンズ氏が小糸製作所の株式を買い占め、筆頭株主のトヨタ自動車に引き取らせるという事件がありました。

株式買い占め防止の声が高まったこともあり、1994年の商法改正で自社株買いが解禁となります。次いで2001年の商法改正では自社株保有も認められるようになりました。ちなみに保有する自己株式のことを「金庫株」といいます。

自社株と自己株式の違い

さて、ここで出てくる「自社株」と「自己株式」は、何が異なるのでしょうか?

この2つの用語は、”基本的には同じ”です。どちらも「株式会社が発行しており、自社で保有している株式」を意味します。

たとえばA社が株式を発行しているとき、A社自身がA社の株式を保有していると、「自社株」あるいは「自社株式」を保有している状態になります。

自己株式「自分自身(会社自身)が発行した株式」の意味。
自社株「自社の株式」の意味。

ただし、異なる意味合いを持つ場合もありますので注意が必要です。

それは自社株という場合、「”経営者”が所有している自社の株式」を意味する可能性があるからです。

たとえばA社の経営者がB氏の場合、A社株をB氏が所有していると「A氏は自社株を保有している」と表現します。B氏はA社とは異なる人格なので「自己株式」ではありません。それでも「自社株」とされる可能性はあるので、この使い方の場合には両者の意味が異なってきます。

報道等で「自社株」や「自己株式」という用語が出てきたら、少し意識してみてください。

文:福谷 陽子(法律ライター)/M&A Online編集部