「グローバルダイニングへの時短命令は違法」判決は何を意味するのか

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時短要請は最も効果的な感染防止対策の一つ

ここでのポイントは東京都が命令を出す根拠となった「新型インフルエンザ等対策特別措置法45条3項」。以下が抜粋です。

「施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。」

そして、続く4項には以下のようにあります。

「特定都道府県知事は、第一項若しくは第二項の規定による要請又は前項の規定による命令を行う必要があるか否かを判断するに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない。」

この2つが裁判で大きな意味を持ちます。

裁判では、東京都が時短命令を出せるのは「特に必要があると認められたとき(3項)」に限定されており、不利益処分を課してもやむを得ないと言える程度の個別の事情が必要と指摘しています。グローバルダイニングは、時短要請中の店舗運用において、消毒や換気などの感染対策を行っていました。東京都は命令を出す前に店舗が行う対策の確認をしていません。店舗を運営することによって感染リスクが高まるという根拠がない状態で命令を出したことになります。

また、命令が出されたとき、緊急事態宣言は3日後に解除されることが決まっていました。4日しか効力がないにも関わらず、命令を出す必要性についての合理的な説明がありませんでした。

こうした事情を考慮し、裁判では東京都が2021年3月18日に時短命令を出したことは違法であると結論づけました。

ただし、東京都が命令を出すにあたり、新型コロナ対策審議会の有識者が命令が必要だとの認識を示していた(4項に示されている「感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない」を満たしていた)ほか、命令を出すことに前例がなかったことを考慮して、東京都に過失があるとまでは言えないとして賠償責任は退けました。

グローバルダイニングは、時短要請や命令が営業の自由を侵害する憲法違反であると主張していました。しかし、判決では時短要請は最も重要な感染防止対策の一つであるとして、合憲であると判断しています。また、グローバルダイニングへの命令が見せしめであることも訴えていましたが、報復や見せしめとは言えないと結論づけています。

グローバルダイニングは判決を不服として控訴しました。

今回の裁判では、飲食業界関係者の間で最も注目度の高い「営業の自由の侵害」について合憲であると判断されました。次の裁判でどのような判決が下されるのか、注目が集まります。

麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。


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