同様の懸念はアジア諸国でも広がっている。そこで利上げなしに通貨安を解消する手段として活用されているのが、外貨準備の切り崩しだ。中央銀行が保有する米国債やドルなどを売って、自国通貨を買い支える方法だ。
韓国やインド、タイ、インドネシアなどで外貨準備高が減少しており、外貨を売って自国通貨を買う為替介入に取り組んでいる。かつて日本が円高是正のために米国債やドルを大量に購入して、円安へ誘導したのと逆の手法だ。
もっとも、円高対策の「ドル買い」は容易だが、円安対策の「円買い」は難しい。問題は資金。「ドル買い」の資金は円だ。足りなければ日銀が円を増刷すれば済む。それにより円の供給量を増やせば円安に振れるので、円高対策にはうってつけだ。
一方「円買い」の資金は外貨であり、円のように「国内生産」できない。外貨準備高の範囲内でしか介入できないし、あまりに外貨準備高が減少すれば日本経済の信用力も低下するため円安にふれる可能性もある。
そもそも外貨準備の取り崩しは利上げに比べると、自国通貨の引き上げ効果は小さい。円安を円高に転換する力はなく、せいぜい円安のペースを落とすぐらいだ。
現時点で最も理想的な解決策は、米国のインフレが収束してFRBが再び利下げに舵を切って「ドル安」に転じるか、日本経済が成長して利上げに耐えられる体力をつけるかのいずれかだろう。しかし、それがいつになるのかは全くわからない。
文:M&A Online編集部
関連記事はこちら
・止まらぬ円安、政府・日銀の介入はむしろ「逆効果」か?
・「米FRBを動かした」と話題騒然、「ジブリの法則」は本当か?