そもそも天然ダイヤも人工ダイヤも、素材は全く同じ炭素。現在では不純物を全く含まない人工ダイヤの方が透明度が高く、美しさでも天然ダイヤを上回っている。そのため宝飾用としての利用も進み、天然ダイヤを取り扱うデビアス社などの取引業者は人工ダイヤを脅威と感じているようだ。
同社は2〜4カラットの原石を研磨して、その半分程度の大きさに切り分けるメイカブル(準宝飾品質)ダイヤの価格を過去1年で4割も引き下げるなど、人工ダイヤとの価格競争を繰り広げている。天然ダイヤは最も高品質なソーヤブルで依然として高い競争力を維持しているが、宝飾用ダイヤ市場では15%を占めるにすぎない。
85%を占めるメイカブル、ニアジェム(低品質宝飾用)の普及品市場で、人工ダイヤに駆逐される影響は深刻と言える。問題は普及品市場だけにとどまらない。取引業者が最も警戒するのは、高級ダイヤの得意先である中国などアジアの富裕層市場だ。
彼らは将来の値上がりを期待し、資産として高級ダイヤを購入している。普及品に引きずられる形で高級ダイヤの値下がりが懸念されれば、高級ダイヤの新規購入を思い留まり、保有する天然ダイヤを高値のうちに処分しようとするだろう。そうなれば高級ダイヤ市場も暴落する可能性がある。ダイヤ市場の先行きに暗雲が立ち込めてきた。
文:M&A Online
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