JTBとJCB。アルファベットの並びがよく似ていて、見まがいそうだが、いずれも日本を代表する企業ブランドとして名高い。私たちの生活にも身近な存在だ。抜群の知名度を誇るローマ字ブランドの由来を探ると、両社ともその生い立ちに行き着く。
JTBの歴史は前身時代を含めて110年に及ぶ。1912(明治45)年、外国人旅行者誘致を目的に設立された「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」を始まりとする。
名称変更や改組を重ね、終戦直後の1945年9月に財団法人日本交通公社として再スタート。JTBはこの時の英文名称Japan Travel Bureauの頭文字に基づく。
1963年、旅行部門が分離・独立する形で株式会社日本交通公社が発足した。海外パック旅行「ルック」、国内パック旅行「エース」を売り出し、「一億総中流」時代の波に乗って旅行ブームを巻き起こした。JTBブランドが広く浸透し、旅行最大手の座を固めた。
2001年にジェイティービーに社名を変更。2018年に「JTB」に改め、ブランド名と統一した。
コロナ禍は旅行需要を消失させ、JTBの経営を揺るがせる事態となった。最悪期の2021年3月期はそれまで1兆3000億円近かった売上高が7割減の3700億円に落ち込み、1000億円超の最終赤字に陥った。東京・品川にある本社ビルの売却に追い込まれた。
一方、JCBはクレジットカードの国内トップブランド。国内2番目のクレジットカード会社として1961年、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)、日本信販(現UFJニコス)、三和銀行(現三菱UFJ銀行)が共同で設立した「日本クレジットビューロー」が始まりだ。
JCBは英文名称Japan Credit Bureauの頭文字で、当初から略称として使われた。1978年にジェーシービーに社名を変更し、今日に至る。JCBはあくまで企業ブランドの位置づけだ。
ちなみに、国内初のクレジットカード会社は、1960年にJTBの前身の日本交通公社、富士銀行(現みずほ銀行)などが設立した日本ダイナーズクラブを指す。
1980年代初め、他の国内カード会社が海外の国際ブランドと提携を進める中、JCBは米国以外のクレジットカード会社として初めて独自の国際展開に乗り出した。ここに、日本発唯一の国際カードブランドが誕生したのだ。現在、海外会員数は3200万人、国内会員数は1億人を超えている。
JCBは決済事業、JTBは旅行事業のトップ企業としてビジネス上、交わることが多い。2006年にJCBとJTBは包括提携し、J&J事業創造、JCBトラベル、J&Jギフトの3社を共同で設立した。また、両社は非上場の著名企業としての共通点もある。
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文:M&A Online編集部